2011年の輸入(届いたのは2012年でしたが)は大成功でした。
今度は本命のマルメロを輸入することにしました。
当時はマルメロが本命だったのです。
私は育種の神様バーバンク(Luther Burbank)のことを知りませんでした。
バーバンクのことを知ってすぐに、絶版になっていた本を取り寄せて読みました。
古い本で、昔の書体で読めない漢字がたくさんありましたが、
がんばって読みました。
その本の中には、マルメロという植物がよく登場しました。
私はマルメロという植物について、かなり詳しく知っていたのですが、
品種についてはほとんど知りませんでした。
私はバーバンクが育種したVanDemanや、Pineapple
といった品種を育てたくなりました。
しかし日本ではマルメロの品種がほとんど出回っていないのです。
日本国内にないなら輸入するしかありません。
これが輸入に手を出した理由でした。
▽マルメロ Kaori
練習台としてポポーを輸入したのは、すべてはマルメロのため。
が、調べていくとマルメロは難易度レベル3(輸入不可)で、
米国からの輸入はできないことが判明しました。
でもまあ、せっかくなので次はレベル2に挑戦することにしました。
2013年6月7日更新
とりあえず、ブルーベリーを輸入することになりました。
お目当ての品種はKestrel(SH)や、Vernon(RE)です。
▼隔離圃場
レベル2の植物は、輸入後に1年間の隔離栽培が必要となります。
今回は2011年12月に隔離圃場を予約しました。
しかし、これでも遅かったようで、名古屋の隔離圃場は既にいっぱいで、
神戸の伊川谷圃場でようやく確保できました。
▼品種とか
目的の植物を販売してくれるナーセリーを探します。
ナーセリーというのは、苗木生産業者のことです。
別に販売専門の業者でも構いませんが、通販に対応していることが重要です。
植物の名前で検索すれば検索できると思います。
ブルーベリーだと、blueberryで検索できますから、
blueberry vernon priceあたりで、いくつかのナーセリーを見付けました。
▼輸入代行業者
植物の輸入をしてくれる輸入代行業者を探さねばなりません。
そんなに多くはないのですが、検索すると四つほど見つかりました。
前回と同じ業者を利用するので、関係ありません。
▼輸入計画書
続いて輸入計画書を提出します。
輸入計画書は、農林水産省の植物防疫課にメールをして取り寄せます。
ここにも置いてありますが、
内容が変更になるかも知れませんので、取り寄せた方がいいと思います。
文書は一太郎かWord、Windows標準のワードパッドで編集して提出となります。
輸入計画書を出したら、輸入代行業者にゴーサインを出します。
▼サドンオークデス
ハーイ、ミナサーン、ワタシハ、アメリカカラキタ、サドン・オークデス。
よくわからないけど、厄介な病気だそうです。
日本にベリー類を輸入するためには、
サドンオークデス病菌の検疫が必要となります。
検疫については、米国の検疫官が検疫をしてくれますが、
検疫を受け入れてくれるナーセリーは限定さます。
検疫可能なナーセリーを
この検疫リスト
から調べて、そのナーセリーから買うことになります。
とても時間がかかる作業で大変でした。
▼州検疫
私が利用していた輸入代行業者は、
米国のワシントン州かオレゴン州にありました。
これが厄介な問題を引き起こしました。
しかし、この米国の北部の三つの州(オレゴン、ワシントン等)は、
他の州からブルーベリーを持ち込むことができないのです。
持ち込むためには、やはり検疫が必要になるのですが、
一般的なナーセリーは、この検疫には対応していません。
土壇場で北部三つの州限定で輸入することになりました。
北米のナーセリーは、暖地向きの品種を扱っていないため、
Kestrel(SH)や、Vernon(RE)は手に入りません。
それでも勉強のために、何か輸入しておくことにしました。
寒い地方なので、NH系品種は比較的充実しています。
Aurora(NH)、Draper(NH)、Liberty(NH)と、
PinkLemonade(RE)などが手に入ることがわかりました。
▼買い付け
しかし私が見つけたナーセリーは、通販に対応していませんでした。
現地の方に車での買い付けをお願いしました。
もちろん費用がかかりますが、
まったくいらない品種を輸入するよりマシです。
無事に買い付けが成功し、あとは前回と同じように輸入できるはずでした。
つづく…
▽植物検疫証明書
▼到着
苗木は米国を出て、日本に届きました。
貨物は普通、成田空港に到着します。
しかし、私の苗木は中部国際空港(セントレア)に届きました。
私が提出した輸入計画書には成田と書いていましたから、
この不審な荷物はなんだということです。
FedExのような宅配便であれば、空港で開封して検疫できます。
しかし荷物はEMS(国際郵便)で届きました。
郵便物ですから、検疫官は法律で開封できません。
税関から「本人が出頭せよ」とのお達しがありました。
苗木は梱包されているというより、密封されています。
早く取りに行かないと苗木腐ってしまいます。
▼出頭
仕事を休んで、中部国際空港に向かいました。
職場のホワイトボードには
「密輸発覚のため出頭」と書いておきました。
セントレアを見るのは初めてなので、
わくわくしながら空港に向かいました。
空港のロビーで税関の方と待ち合わせです。
目印として互いの服装などを説明し、落ち合うことになりました。
いかにも密輸っぽいです。
無事に会うことができて、事務所に連行されました。
▼受取り
荷物を受け取り、その場で箱を開けました。
長旅のため、多くの苗がずいぶん傷んでいました。
保水ジェルが入っていたビニール袋は気圧の変化で破裂していましたし、
保水ジェルに浸かった茎はカビそうでした。
これはいい勉強になりました。
本来、苗木の状態というものは、個人が確認できないものです。
梱包の問題点や、発送のコツがはっきりとわかりました。
後にこれが役立つことになりました。
▼転送
私の苗木たちは、神戸の伊川谷圃場に転送されることになりました。
ここでいろんな用紙にサインをするのですが、
別に覚えておく必要もないでしょうから説明は省略します。
残念なことに、世間の人たちは翌日から
ゴールデンウィークに突入するのでありました。
空港で家族やカップルがバカンスを楽しみにしている中、
私は空港でたった一人、密輸疑惑の汚名を晴らしていました。
まあ、それはいいです。
ということは、隔離圃場の職員もお休みというわけです。
私の苗木はさらに傷んだはずです。
▼隔離栽培
数日後、ようやく隔離圃場に苗木が届きました。
植え付け完了のメールが届いたのですが、
一部の苗はダメかもしれないと書かれていました。
隔離栽培の途中、何株かの苗が枯死しました。
実物を見ていたので、覚悟はできていました。しかたがないです。
▼検疫合格
2013年4月x日、検疫が終了しました。
枯死しなかった苗木はすべてが検疫に合格しました。
私は子供たちを連れて、現地に引き取りに行く予定でしたが、
当時はちょうど2013年の密輸(嫁に対して)が発覚した直後でして、
嫁の機嫌がひじょうに悪いため断念しました。
苗木は着払いの宅配便で送ってもらいました。
▼定植
仕事が終わり、帰宅したら苗木が届いていました。
嫁となるべく目を合わせないようにして、中身を確認しました。
鉢から抜かれた苗木は、土がほとんど落とされています。
少しでも早く、土に植えなければなりません。
鉢や土は前日の夜に用意していました。
深夜にもかかわらず、植木鉢に植えました。これでひと安心です。
▽植え付け直後
前回の輸入とは違い、きちんとしたデータが残っていますので紹介します。
こんな感じになりました。
┌────────────────────
│ブラックベリー苗×9 = $31.40
│ブルーベリー苗×3 = $42.1
│買付け手数料 = $134.40
│USDA Phyto Filing fee = $196.00
│検疫代行手数料 = $150.00
│根洗い = $42.00
│輸入代行手数料(15% or $30) = $30.00
│送料 = $118.59
│クレカ手数料(4%) = $29.78
├────────────────────
│合計 = $774.27
└────────────────────
1$=100円で計算すると、77,000円ということですね。
クレジットカードの引き落としがあるので、嫁にはバレバレです。
これ以外に、セントレアに出頭するための旅費(3300円)、
セントレアから隔離圃場までの送料(約1500円)、
検疫を終えた苗木の送料(約1500円)などがかかりました。
日本では、ナシやリンゴなどの果樹については、
火傷(かしょう)病の侵入を防ぐため、
発生国からの輸入を禁じています。
発生国は、米国、カナダ、英国など、ほぼ世界中です。
バラ科のナシ属、リンゴ属はすべて輸入禁止ですし、
何気にナナカマド属もアウトですし、ビワとかマルメロもダメ。
よって普通に考えると輸入は無理です。
火傷病が発生していない国から、
マルメロの品種を取り寄せることは可能です。
オーストラリアではVanDemanもPineappleも販売されています。
あちらはキウイやフェイジョアの品種が豊富です。