コルクの草履を全国へ発信 コルクで草履、作りましたー。四日市市楠町のメーカーが三年かけて開発。新ブランドを立ち上げ、今年から全国に発信している。日ごろ、目立つ存在ではないコルクだが、その特性や変わった生産方法は、実は人にも環境にも優しい優れモノ=Bコルクを知り尽くしたプロの熱意とこだわりで生まれた逸品を確かめに訪れた。(福家 明子)
風合いと履き心地魅力
四日市の呉山コルク工業
日本古来の和草履を基にした「WA―ZORI(わぞうり)」。製造販売元の呉山コルク工業は、和装履物の草履しんの製造で、全国シェア六五%を占めるコルク材・製品メーカー。創業五十四年を迎える。
「コルクはどちらかというと、人に見えないところで使われていました。これまでのノウハウを生かし、お客さまに直接届くものを世に送り出したかったんです」。三代目の呉山世振社長(54)はそう話す。
コルクは、ポルトガルなど地中海沿岸諸国に生育するコルク樫(カシ)の樹皮をはぎ取って加工したもの。ワインの栓というイメージが強いが、軽量で断熱性、吸音性、弾力性があり、住宅建材や自動車部品、野球ボールのしんなど用途は幅広い。
樹皮ははぎ取っても九年ごとに再生するため、樫の寿命である約百五十年の間、伐採せずに繰り返し採取できる。製品加工時に出た端材も再利用され、別の製品に。自然の生態系を守り、廃棄物も出ない。時代に合ったエコロジー素材と言える。
開発では原材料の粒の大きさ、材質、デザインなど細部にこだわり、履いた感触を決める硬さの調節には特に時間をかけた。三年後、念願の新ブランド「バーク・オブ・ケイ」が動き出した。
呉山愛子チーフは「浴衣はもちろん、カジュアルなファッションにも似合います。コルクならではのナチュラルな風合いと履き心地の良さが魅力です」。
夏は汗をかいてもさらっとして、冬はじわーっと温かい。足が疲れず、次第に足になじむのもコルクの特性によるもの。鼻緒の柄は大正ロマン風、モノトーン、小菊など豊富で、草履の裏に施した桜の花びら模様の滑り止めが女性のおしゃれ心をくすぐる。
製造工程の大半が職人による手仕事。「量産はできないが、手をかけた良い物ができた。コルクの良さも広めたい」と呉山社長。
夏に向け、販路拡大に力を入れるほか男性用、室内用も検討していくという。
インターネットのホームページで販売。価格は税込八千九百二十五円、送料無料。フリーサイズ。
H19.3.14 第290号
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