「深野のだんだん田」を地域の宝に
“石の芸術”を後世に


 石積みで出来たあぜが、幾重にも重なる棚田(たなだ)が松阪市にあり、景観と“石の芸術”などで日本の棚田百選に選ばれている。傾斜の地形を利用した先人の知恵を、個人所有者らが保全。今も水田に利用しており、夏は緑、秋は黄金色と、四季折々で美しい。各地からの観光客も多い。間もなく田植えの時期に入り、水が張られて青一色の姿になる。


 ここは同市飯南町の「深野のだんだん田」。棚田の面積は六百三十平方bで、枚数は五百五十枚。三百万個の石を積み上げてできた石垣があぜとなり、“石の芸術”ともいわれている。


 同所は約四百三十年前の室町時代、北畠氏の重要な拠点だったため「のろし場」があり、見張り役の侍たちの食糧確保のために開墾したという。


 もともと岩石が多く、急斜面で複雑な地形を棚田としてうまく利用している。


 今は同地区の十九人が所有。用水路の清掃や石垣の管理などの保全活動に取り組み、平成十四年度からは国の補助金も受けている。


 三千平方bの田を持つ栃木善明さん(57)は、休耕中も野菜のほかヒマワリ、コスモスなどの景観作物を植え、荒廃しないように努力。地元小学生らの農業体験や、地元の酒屋が作る酒米の手植え体験の場にもなっている。


 五月初旬の田植えに向け、土を起こす作業に入った。複雑な地形のため小型トラクターしか入らず、苦労も多い。川から水を引いているため、水不足やサル、イノシシなどの自然の被害にも悩まされる。


 十月までのシーズン中、数回にわたり所有者らが一斉に水路などの草を刈り、景観の保全に努める。


 平成十一年には「積極的な維持・保全の取り組みにより、多面的な機能の発揮と優れた棚田として保全され、大きな役割を果たしている」と、日本の棚田百選に選ばれた。


 同市飯南地域振興局地域整備課・高橋克弥主査(39)は「水が貯まるので、土砂崩れなど、自然災害の防止にもなる。季節によってさまざまな姿に変わり、市外からもアマチュアカメラマンなど多くの人が訪れる。地域の活性につながれば…」と話していた。


 栃木さんの話


 後継者がいる限り、地区全体で守り続けていきたい。今後、桜の木などを植え、公園のような休憩所も作りたい。


H19.4.25 第292号

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