自費で本陣跡を休憩所に 宿場町や旧跡など、風情が多く残る旧東海道には、遠方から歴史散策や研究などで多くの人が訪れる。「休憩所でゆっくり歴史を感じてもらえれば」と、江戸時代に宿場だった本陣の一角に、運営者の末えいが休憩所を建設した。無料で利用できるほか、約三百年間に同本陣を利用した歴代大名の資料なども展示され、人気を呼んでいる。 (江川 智恵)
江戸期の貴重な資料を展示
ここは鈴鹿市石薬師町、旧小沢本陣跡休憩所。石薬師宿は旧東海道五十三次の四十四番目の宿場で、一六一六年に幕府の命で設けられた。
以来、明治天皇が東京へ移った一八七一年まで、歴代の将軍が京都へ上る時や大名が参勤交代で江戸に行く際、宿泊・休憩していた。
本陣を営む小沢家の七十七代目・小沢晋さん(79)は、同所に住み、歴史散策に多くの人が訪れるため、これまでは自宅で対応してきた。
しかし本陣も古くなり「現代風の休憩所で観光や研究に訪れる人たちに休んでもらえれば」と、自費で休憩所を建てた。
現存する三千九百六十七平方bの本陣の一部を壊し、木造平屋建てで約八十平方bの休憩所に。本陣跡の品格を保つため、使用した木材はすべてヒノキ。約三千万円かけ、約一年で完成させた。
和室二部屋と洋室があり、小沢家に残る貴重な資料を展示している。
京都に行く際に泊まった徳川家光が、お礼に置いていった掛け軸、加賀藩主から贈られた九谷焼の食器など、歴史に名を残す人物のゆかりの品が並ぶ。
約三百年間の宿泊者の名前が書かれた宿帳もあり、大岡越前守や「忠臣蔵」で有名な赤穂城主の浅野内匠頭など、全国の大名の名が墨書きで記されている。
休憩所を設けてから約五ヵ月。これまで六百人以上が利用。小沢さんはお茶でもてなし、資料について説明している。
週末には東京からツアーで約三十人が訪れるなど、全国から人が集まり、大阪からは大学の研究者も来るという。
小沢さんの話
屋根裏から見つかった百枚の関札など、休憩所に展示しきれない本陣ゆかりのものがまだまだある。多くの人に見てもらい、休憩がてらに歴史を学んでもらえたら。地域発展の一助にもなればうれしい。
H19.6.27 第295号
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