希少大豆「美里在来」を復活栽培
松阪・権現前の営農組合


 地域農業を守ろうーと、松阪市嬉野権現前地区では、農家同士が力を合わせ集落営農「権現前営農組合」を結成。それ以来、転作として古来から三重に伝わる希少大豆「美里在来(みさとざいらい)」の栽培に、積極的に取り組んでいる。(木下 英里)


 ここは松阪市嬉野権現前町。田んぼや畑が広がるのどかな町だが、その背景には後継者不足などの問題が。荒地化する所も少しずつ増えてきている。


 そんな姿を目にした池端喜一さん(66)は、危機感≠抱き、農協退職を機に地域に呼びかけ、平成十年七月同組合を立ち上げた。設立までに二年。四十回以上の話し合いを重ね、断念しそうになったこともあったという。


 大豆栽培への取り組みのきっかけは、組合員に豆腐製造業者がいたことから。米の転作作物として始めたが苦労ばかり。特に機械を導入した直後は、機械に合った栽培方法が分からず茎葉が成長しすぎて収穫できなかったことも。


 大豆が10センチほどになったとき、除草効果をかねて小さな耕耘機で畝(うね)の間を耕す「中耕管理」がもっともきつい作業。さらに無肥料、除草剤不使用で、農薬は殺虫殺菌剤を二回使うだけ。


 品種は加工業者の要望で、地元にこだわった。県の農業技術センターの協力で、県内産の在来品種を試験栽培。育てにくいが味は良い≠ニ「美里在来」を導入した。


 この品種は津市美里町を中心に江戸時代から田のあぜに栽培されていたが、農作業の機械化ともに次第に減少。しかし、他の品種に比べて粒が大きく、デンプン質が多いため、伝統作物として復活栽培≠ノ力を入れている。


 昨年からは、大豆のおいしさを多くの人に伝えたいと「うれしのえだまめ祭り」を開催。枝豆の試食や収穫体験なども行い積極的に消費者にPR。


 このほか平成十七年八月には、同地区の空き店舗を利用し、同組合員が生産した農産物を売る旬前耕房「ごん豆(ず)」を開店。多いときは一日に約百五十人のお客が訪れている。


 組合長の話


 市民農園などを造って、一般消費者との交流を図ること、伝統のある地元の産物を子供たちにも伝えていきたい。


H19.11.28 第302号

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