「どぶろく」に託した町おこしの願い 昔のようなにぎわった祭り≠復活させたい―。四日市市四郷地区の室生神社奉賛会=後藤進会長(六五)=が、地元の酒造会社に思いを託し、このほど町おこしを願う酒が完成。秋祭りで来場者らに振舞ったところ好評で。同社は、数量限定であるがインターネットなどで販売を始めた。
奉賛会と酒造会社が結束
インターネットでも好評
同地区は天白川が流れ、製糸工場跡や酒蔵など、明治時代のたたずまいが今も残り、かつては「近代産業発祥の地」とも言われていた。
しかし、核家族や少子化、さらにマンション建設などで新しい人も入ってきて祭りのにぎやかさが次第になくなった。
五年前、土井一成さん(六七)が奉賛会長をしていた時に危機感を感じ、これまでの会則を見直した。
神社に宮司がいないため、神事は同会が運営。従来のセレモニー的なものから餅つきなど、神社を中心にコミュニティーを図れるものへと転換。
その中で、岐阜県白川村の「どぶろくまつり」をヒントに、この地区でも酒ができたら…、と神楽酒造の伊藤隆造代表(六七)に相談を持ちかけた。
造るからにはお酒の原点であるどぶろく≠―と、今年九月に約四十`の新米を仕込んだ。醸造用アルコールを使った清酒が主流になっているなか、米だけの本物の味を出し、高齢者にとっては哀愁のある酒に仕上がった。
名前は復活を願った「ふるさと四郷のどぶろくまつり」。純米吟醸の濁り酒で、やや酸味のあるのが特徴。ラベルは同会仲間で篆(てん)刻が趣味の澤野修甫さん(七一)がデザイン。一つひとつに心を込めて印かんを押している。
お披露目したのはさる十月の秋季大祭。獅子舞や七五三の祈願、展示などで振る舞われ、「口当たりが良く、すっきりとした甘酸っぱさ」と女性にも人気という。
買ってでも飲みたい―という声も出ており、先月からは三重の特産品販売サイト「リージョネット三重」で販売開始。日持ちがしない上に、一度の仕込みで一・八g瓶五十本程度しか造れないため数量限定。それでも県外からの注文もあると言い、伊藤さんは「地域に喜んでもらえてうれしい」と喜んでいた。
(内田 敬子)
H19.12.12 第303号
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