「なぁ?」

「なんでしょうか」

気のない呼び声と気のない返事。
俺となのはの相性は結構あっているのかもしれない。

「最近のメイドってさ、機関砲をぶっ放したり、格闘したりしないの?」

「しますよー」

「そかー…」



「はぁ!?(゚Д゚;)」」

自分でもあり得ないと思っているなら聞くなと言った話だが、その返事には驚いた。
メイドが戦うなんて「メイドさんと大きななんとか」だけの話だとばかり思っていたからだ。

「思っているなら聞かないでくださいよー」

相変わらず何で俺の考えている事が読めるんだ、こいつは。

「戦うメイドって…何と戦うんだよ。 まさか本当にメイドさんと大きななんとかみたいにご主人様を守るとかじゃないだろうな」

当然、疑心暗鬼な俺は思った事をそのまま伝えた…するとなのはは眉間にシワを寄せてニヤニヤしている。

「メイドさんと…何ですかぁ?」

ぐっ…こいつは知ってやがる。

「まぁご主人様のエロゲー大好き趣味は横に置いといてー」

うるさい。

「そのゲームじゃないですけど、本当にメイドが護衛を兼ねる事はありましたよ」

「本当にあったのか…エロゲーの話だけじゃなかったんだなぁー…ってありました?」

俺がなのはの話を聞き入っていると、ふいにドアの開く音がした。
芹菜だ。

「あ、噂をすれば戦うメイドさん!」

「へぇ?」

芹菜らしからぬ、何とも間の抜けた返事だった。

「芹菜さんってマスターキーパーの資格も持ってますよね?」

「え?ええ、マスターキーパーね。久しぶりに聞いたわよ、そんな単語。確かに大昔に取った資格だけど…今時行使する機会はないわねぇ」

マスターキーパー…遥か大昔、俺がまだ中学生になったばかりの頃に聞いた事が…ないッ!

「なんだよそれ」

「そのまんま、主を守る資格ですよー 西洋の名残でメイドにも武力を持たせて主を守らせるんです」

「でも最近は取得する人も減りました。今ではSPもいますし、治安の悪い国も幾分は減ってきましたので」

本当にあったのか、そんな資格…

「やっぱり大きな剣を装備するのか?」

「助平」

うっさい。

「剣に限ったわけではありませんが、発祥の西洋ではダガーやナイフ、ウィップ、フレイル等が使われていたらしいですわ」

「ふーん、確かに女戦士じゃなくてあくまでメイドだもんなぁ〜 そんなに重い武器は使えないよな」

鞭か、なのはにピッタリだな。
芹菜には投げナイフとか似合いそうだ。

「メイドとはちょっと違いますが、日本で言えば側室が薙刀を使いこなすような感じではないでしょうかね」

「なるほど、言われてみればそうだな。でもそんな最近まであった資格なのか?」

芹菜が持っているくらいだ。
でも今の日本では、警備員だって銃火器どころかナイフの携行すら許されていない。

「やだなぁーご主人様、芹菜さんが大昔って言ってるんですよ?それこそよっぽど…」

なのはが言い終わる前にゴスっと鈍い音が響いた。
芹菜の鉄拳が頭部に直撃したようだ…芹菜は年齢関係には容赦がない。

「5年前です!」

「5年前かぁー と言うか日本は銃刀法があって5年前も武器の所持は認められていないはずじゃ?」

「資格取得は欧州ですから」

なるほど、欧州なら納得がいく。
欧州かぁ
欧州

「欧州!?」

「反応遅ッ!」

クッ、いつも思うがなのはが優位に立っているのが悔しい。
腐っても佐川家の人間。メイドの知識に関しては負けてしまう。

「欧州欧州って、欧州なら何でもありかよ。で、芹菜もナイフや鞭が使えるのか?」

「いえ、恥ずかしながら白兵戦評価があまり高くなかったので…途中で護衛銃剣術に変更しまして、主にハンドガンがメインです」

「そうか、ハンドガンなら女性でも手軽に扱えるもんな」

「ええ、それでも反動がかなり大きいので、習得には苦労しましたわ」

「えーどんなの使ってるの?見せてくださいよー」

「ほらこれよ、ワルサーPPK」

「おー!ジェームズのやつですねー」

「そうね、最初は映画の影響で使ってみたのだけれども、これが思っているより使いやすいのよ」

「なるほどー」

「へぇー凄いな、俺も実銃みたのは初めてだよ、あははははは」

「ははははは」

「うふふふふ」



「じゃねぇだろ!!!!!Σ(`Д´;)」

「うおっ!ビックリしたー!Σ(゚Д゚)」

「きゃあッ!ご、ご主人様…急に驚かさないでください!」



「なんで!日本で!銃を持ってるんだよ!」

「資格を持っているからですけど…」

「資格を持ってりゃいいのかよ!」

「はい」

ああそうだ、こいつらの所属している…なんだっけ。

「日本奉仕連盟」

そうそう、それは何かかなり怪しい組織だから銃火器の使用もありなんだろうな。

「それも連盟が法律以上の権限で許可しているのか?」

「うーん、正確には世界統一奉仕連盟の守護特権第2条“武装強化”で認められている権限です」

初耳だ、そんなのがあったのか。

「じゃあなのはも銃を持ってるのか!?」

いかん、これは非常に危険だ!
明日にでも俺は射殺される可能性がある!!

「私はマスターキーパーの資格を持っていないので、武装は認められてないですよぉ?」

「良かった…」

何がよ!と言わんばかりの視線が突き刺さる。

「しかし今のメイドって何でもできるんだなぁ、日本の憲法も形無しじゃないか」

「ちがいほうけん…ってやつじゃないですかねぇ」


どこの大使館だよ、ここは!


第13話 メイドさんと小さなハンドガン 終わり