ここは第5補給隊 2030年、戦争と呼ばれるような戦争が起こらない中、人類は平和なひと時を過ごしていたかに見えた。 だが世界中ではあいも変わらず紛争が起こっている。 ただ1つ変わっていたのは… こちら第5補給隊 出動、弥富補給隊 「めんどくさいわねぇ」 ブツブツと文句を言いながら、彼女は髪を後ろで止める。 「本人にとってつまらない事は、何でも面倒になるものだ。」 「そんなものかしら?」 「君は補給部隊に向いていないのだろう、何故ここに?」 「うーん、やっぱり今の時代は補給部隊が一番目立つからかな」 ここは最前線の後方20km駐屯地、愛知県弥富市。 現在、日本は名古屋を中心に対韓勢力である、【対韓国儀仗団】とそれを食い止める戦術自衛隊とのこう着状態が続いている。 「確かに今は補給部隊が脚光を浴びつつある、しかし結局は空軍によって押し切られるものだ。空軍の方がよかったのでは?」 「あー、私飛行機ってダメなのよねー、怖くて」 「…補給部隊にも航空作戦はあるぞ」 「ちょっとー!サボってないでよー!」 遠くから幼声が響き渡る。このお叱りを受けるのは本日何度目だろうか。 「あーあ、うるさいのが来た〜」 「むぅー!うるさいって何よ!ちゃんと職務に従事してよね!」 小ささに反比例したやる気を持っているのが、社日きなこ。若干12歳にして弥富補給隊の実質的な統括者だ。 当初は祖父の七光りと言われていたものの、配属5日で頭角を現し、今では祖父に負けないほどの軍人になりつつある。 「感嘆符が多いー」 こっちの胸の大きさに反比例してやる気のないのが、風条寺舞。曰く名は捨てた、だそうな。 典型的な今時の若者で特にやりたい事もなく入隊したためにこんな感じになってしまった。 「訂正してもらおう、私は自分の任務に従事している」 「やだなぁ、御刀大尉の事じゃないですよ」 「訂正してもらおう、私は自分の任務に…」 「うるさい、税金ドロボー」 「な、何よ!この規格外ちびっ子!胸も身体も小さいくせに文句だけは一人前なんだから!」 「舞、12歳相手に身体的特徴を指摘するのはよくないな、来年にはキッカー付の爆発的成長をするかもしれない」 「舞って呼ぶなー!」 たかだか小規模のテロリスト集団、本格的な戦術自衛隊の前にはなすすべもなく、この日も補給部隊は暇だった。 「そうなんだって!だからする事もないし、ここで御刀と一緒に日向ぼっこしてるのよ!」 「強気で言わないでよ!」 「舞、そろそろ本格的に準備した方がいいぞ。前線部隊が動き出すようだ」 「舞って呼ぶなぁ…」 「そうだ、報告です、御刀大尉。攻略部隊は順調に侵攻しているものの、敵火砲陣地が突破できないそうです」 「そうか、なら彼らも補給より砲弾が欲しいだろうな」 「では?」 俺は襟章を正し、EIMを装備すると号令を出した。 「ああ、第五補給隊はすぐに火力展開し、砲撃地点鶴舞公園へ移動する!」 「了解!」「りょーかーい」 本当に対照的だ。 場所は変わって名古屋市中村区、名古屋駅前 「そ、総員退避ー!」 「うわぁー!に、逃げろー!」 「何なんだ、あれは!!」 戦術自衛隊愛知駐屯地第2攻略隊はツインタワービルの眼下にて、黒く巨大な機械と対峙していた。 いや、あれは対峙ではない…一方的な攻撃だ。 「ふっ、東海最強と言われた愛知第2もこの程度か!」 「エドゥルヴ指令、あまり遊びすぎるのはいかがかと…」 「うむ、このまま第二を迎撃後、金山周辺を征圧。一気に弥富拠点を攻撃する!ディアボロス、機動形態へ移行」 漆黒の巨大兵器はそのまま金山へと疾走していった。 同時刻、港区 第五補給隊。 「いい風ねー、ねぇ月下。作戦が終わったら名古屋港水族館でジンベイザメみない?」 (…ジンベイザメは大阪水族館だよぉ) 「そうだな」 (大尉も気づいてよぉ…) 目算で5kmほど前方であろうか、大きな黒煙が立ち上っていた。 「作戦終了時に水族館があればな…来るぞ!」 5km先で黒煙が立ち始めたのが5分前。そう考えればその兵器は恐ろしい速さでこちらに向かっていた。 【ルゥオオオオオオォォォォ】 「な、なにあれ?」 漆黒の大型機動兵器はモンスターを彷彿とさせるような叫び声を上げている。 「威嚇…かな?」 「前部のレールガンユニットが開放されたのだろう、ディアボロスのレールガンに電磁波が流れるとあんな擬音を放つ」 「レールガン!?ってかディアボロスって何!?」 [はい… はい… 現在所属不明の大型機動兵器が… ええ、 ッ!本当ですか?] 通信を終えたきなこの顔は、まさに蒼白と言った表情だった。 「大変だよ、小牧の第二が全滅したって入電が!!」 「あいつが元気に南下しているって事はそうだろうな、狙いは弥富…そして奈良・京都だな」 「単機で!?そもそもたかがテロリストが何であんな機動兵器を!?ってかディアボロスって何!?」 「原因はわからんが、迎撃の必要があるな。社日!対装甲攻撃準備、長距離砲を水平射撃だ!」 「了解!」 (さて、元来長距離にしか使えない榴弾砲でどうやりあうかな。) ディアボロス内部 「何だ、あの装甲車は?」 「さぁ、ただの偵察車両では」 「くだらん、無視して構わん。邪魔をするならひき殺せ」 「…了解」 「エドゥルヴ指令!」 「鳳仙花か、コントロールルームには来るなといってあるだろう」 「す、すみません」 「で?何事だ?」 「目前の装甲車両に、二対の日本刀の紋章が!」 「二対の日本刀…第五、御刀かッ!?」 突如、感情の見えないエドゥルヴから笑みがこぼれる。 「そうか、御刀か…これはいい…よし、全砲門を開け。奴を排除する」 そう言うとエドゥルヴはまた表情をなくし、いや隠して砲座に着いた。 「月下、来るわよ!」 「総員、9時の方向に回頭後、直接射撃!行くぞ!!」 こちら第5補給隊 伝説の補給部隊 第一話 出動、弥富補給隊 完 |
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