――では、とにかく曲を創りたいとして、まず何をそろえればいいのでしょうか。
色々な選択肢があるとは思います。とりあえずフリーのシーケンスソフトを拾ってきて、既にあなたのPCに搭載されているサウンドカードをコントロールするのが一番安く手軽かもしれません。フリーで手に入るソフトウェアシンセサイザーを使ってみるのも良いでしょう。
が、ある程度予算に余裕があるか、あるいはとりあえず始めたいけど、それをしばらく継続して使ってみるつもりがある方は、MIDIオールインワンパックが面倒がなくてよいでしょう。代表的なところでは、
Roland ミュー次郎
YAMAHA HELLO!MUSIC!
などです。
オールインワンパックというのは、俗に、『それを買えば、その中に含まれている品物だけで、作曲・編曲が始められる』パッケージの事を指します。(…いや、パソコンは要りますが(><))基本的には、
●音源
●シーケンスソフト
●接続手段(主にシリアル、上位機種ではUSB)とそのためのドライバソフト
あたりが全て含まれており、それらを適切にセットアップすることにより、どんなジャンルの曲でもまずは創り始めることが出来る、というようなものです。また、GM/GS/GS2(Rolandのみ)/XG(YAMAHAのみ) などのフォーマットに対応していることにより、同フォーマットで作成された他人の曲を、ニュアンスを失うことなく聴くことが出来るというメリットもあります。
この『オールインワンパック』という言葉は、特にMIDI音源+α のパッケージにて用いられる用語のようです。MIDIを用いた個人用作曲・編曲パッケージ(…云いにくいですね、ホントに。(T▽T))として有名なのは、やっぱりこの二種になってしまうでしょう。――ハイ、他にも、KORG/AKAIなどのパッケージや、あるいはPC用サウンドボードで一つづつ組んでいく、などの道もあるのですが――ここまで読んでみて、ちんぷんかんぷん一休さんな方は、とりあえず上記のシリーズ(ミュー次郎/HELLO!MUSIC)を購入するのが、一番楽で、かつ無難でしょう。それも、一昔前のパッケージがよいでしょう。これを書いているのは5/12/00ですが、この時点で云うならRolandならSC-88Proのパッケージ、YAMAHAならMU100(ワタシはこれをしばらく前まで使っていました)のパッケージあたりです。これらは、充分なパフォーマンスを持っているにも関わらず、すでにそれより優れた(?)機種が発売されているからということで、可愛そうにも(我々にとってはありがたいことに)安価で売り叩かれていたりします。中古であれば更に安く手に入れることが出来るでしょう。これらを買ってみてそれでものたりなくなって初めて、それより上の機種に手を出せばいいのです。まず試してみるなら、三万円程度で考えてみるのが良いでしょう。
参考までに、ゲティの環境は、こんな風になっています。
主力を
●MU2000(YAMAHA、XG音源)
とし、シーケンスソフトは
●XG Works(YAMAHA)
です。これに、
●PLG100-DX(YAMAHA、MU2000に装着するプラグインボード。FM音源 YAMAHA DX-7相当)
●SC-88(Roland、GS音源)
●CM-500(Roland、GS/LA音源)
を補佐として使っています。鍵盤は図の通り、PC-200mkIIです。これは内部に音源を持たない、純粋に外部機器をコントロールするため*だけ*の装置です。そして、MU2000からの音と、SC-88からの音(それに必要であればCM-500からの音)を、簡易ミキサーであるRoland MX-5にてミックスして、スピーカーに流しています。見ての通り、全てがデジタル処理というわけではありません。その必要性を感じていないからです。逆に、必要性を感じるようになったら、即構成を変えるでしょう。
Roland vs. YAMAHA
サウンドボードなどを使わない、MIDIでのセットアップを考えるとして、その両雄である RoalndとYAMAHA、はたしてどちらをとるのが良いのでしょうか。
これに関しては、なんとも云えません。結局最後に効くのは、『あなたがその音源に 搭載されている音を気に入るか』なのですから。――ただ、概して、ワタシは以下のような イメージを持っています。
Rolandは、各音色が完成されている。云い換えれば、くどい。それゆえに、最初は、何も 考えずとも、それなりの音が出る。しかし、一歩進んで、自分なりの音を出したくなった ときには、その音のクセの強さが足を引っ張ることがままある。とはいえ、やはり、 有名な音は一通り網羅しており、典型的な音を鳴らしたければやはりこちらに 一日の長があるだろう。特にクラッシュシンバルの『カシャーン』という音は YAMAHAにはない。
YAMAHAは、全体的に音が薄い。エディットで作り込むためということらしいが、それに しても特にシンバルの弱さはいかんともしがたい。しかし、確かに、作り込みでの自由度は 高い。特にプラグインボードを使っての『有機的な』『自分なりの音創り』は強い。また、 シーケンスソフトを自社の音源専用として作り込む(他社音源もコントロール出来ますが、 ちと面倒です)ことで、素人には難解な16進数のメッセージを考えることなくグラフィカルに あらゆることをコントロールすることが可能。
…なんて、ここで云ってみたところで、言葉で音や使い勝手のすべてを伝えられようはずも ありません。ので、出来れば、お店に行って、Roland/YAMAHAといわず、KORGもAKAIも、全ての 音源を聴き比べて、それで判断するべきです。その際に、あなたがもっとも求める音は何なの か――それを考えておくと、少しは判断材料になるでしょう。ちなみに、ゲティの場合、それは 『迫力のあるオーケストラヒット』でした。…プリセット音でそれを満たす音源はありませんが、 幸いなことにそれを満たす手段を持つ音源が、ゲティにとってはMU2000でした。それが、 ワタシがこの音源を(MU100を売ってでも)メインとして選んだ理由です。
なんていいながら、シンバルの弱さをSC-88で補ってるんですけどネ☆
教訓
結局、カネがものを云う。
LAの時代
ワタシがMIDIを始めた――いや、正確に云うならば、その音楽制御環境をDOS/Winに移したの は、確か、1990年前半だと記憶しています。この頃に『なるべくたくさんの音色を使いたい』 というゲティの目に映ったのがRoland CM-500でした。(勿論、『シロートが買える値段で』 という制限付きです)この音源は、GSフォーマットに準拠しているだけでなく、LAという まったく別の音源も搭載していたのです。ワタシは、このLA音源の音が結構好きで、 割と最近まで使っていたのですが――流石に、MU100+PLG100-DXを使い出して以降は、 そちらばかり使うようになって、LAの方は使わなくなりました。なんというか、独特の 響きがあって、気に入っていたのですけどネ。――だので、今では、それは繋がっては いるものの、単に信号をThroughしているだけになっちゃってます。
とりあえず、自分の環境をセットアップ出来ましたか?(まさか、その前にいやになってしまってやめちゃった人はいないでしょうね)
しばらくは、好き勝手に色々な部分をいじって遊んでみるのもよいでしょう。ごくごくカンタンな短い曲、あるいはジングルなどを作ってみるのもよいでしょう。とりあえず、ツール(シーケンスソフト)への習熟は必須です。こればかりは、あなたが選んだソフト次第なので、ここではどーにもなりません。
さて、ある程度馴れたら、いよいよ曲創り――と行きたいところなのですが、その前に、次章から何章かにわたって、簡単な知識だけ、ひとさらいしておきましょう。いやいや、ホントにカンタンなところだけです。というか、きちんとした音楽理論が必要なら、それに関する本を数冊読んでもらった方がよっぽどヨイです。ただ『一度そういう本を読んでから来てください』ではあまりにも不親切なので――この中で、説明していくのに必要と思われる単語や概念だけを、さっくり流していきます。