ワタシは、コンピュータを使って作曲をしようとするときに、オタマジャクシたちがそれほど重要であるとは思いません。というか、楽譜というヤツは、曖昧さだらけで、ちっとも正確でないのです。その曖昧さをなくすために、オーケストラには指揮者がいて、その指揮者が思うとおりに各楽器たちはその音を奏でる――わけなのですが、それだけに、ニュアンスは全部指揮者に委ねられちゃうわけです。なのでもし、前の晩にしこたま酒を飲んでフラフラのまま演奏に挑んだ指揮者がいたら、その出だしが頭に響くからと、いきなりピアニッシモでピアノ協奏曲第一番を演奏してしまった、なんてこともあったかもしれません。(ないか^^;)
それはともかくとして、コンピュータの上では、楽譜は絶対ではありません。それよりも、コンピュータを使っての作曲につきものな、ノートだのベロシティだのドラム・インストゥルメント・リバーブ・センド・レベルだのといった魔法の呪文を覚えていく方が断然役に立つでしょう。
でもまあ、オタマジャクシを知っていれば、音楽論の説明が楽なのは確かなので――それを楽にするためだけに、少しだけここでオタマちゃんたちとお友だちになっちゃいましょう。
図を見てください。どんな音楽書でもとにかくまず最初に出てくるおタマ(というよりタマゴですかね)ですね。これくらいは、読めますね?一番左がドです。この位置は、一番基本になる位置なので、覚えておいてください。次いでレ、ミ…一番左が、オクターブ上がったドになります。
このドレミを、アルファベットで云うと、それぞれ図の通りC(ド)、D(レ)、E(ミ)…B(シ)、そしてオクターブ上のC(ド)、ということになります。なんでわざわざCから始まるのか知りませんが、とにかくそうなっています。
また、音楽にはキーという概念があるため、『ドの音』といってもそれが本当にドなのか、それとも『ドとして聞こえるだけで、別の音』なのかがはっきりしません。そこで各々の音を厳密に云うために、いろはの文字をドレミに割り当てたのがその下のイロハで、ドの音はハ、レの音はニ…という風になっています。そう、ハ長調とかイ短調とかいうのは、これから来てるのです。(調に関しては、次の章で述べますね)
ちなみにこの時、『本当のドの音』で云うドレミを『固定ド』、『本当は違う音なのだけれど、ドレミ…という風に聞こえる』ときのドレミを『移動ド』なんて云ったりしますけど、まあこれは参考まで。
図の左上に、ぐねぐねっと巻いた記号、これがト音記号です。中央の十字部分に来る線、つまり(1)の線がトの音、すなわちソになるので、ト音記号といいます。同様に、左下の記号は、ヘ音記号です。ふたつあるぽっちの中央、つまり(2)の線がヘの音、すなわちファになるのでヘ音記号といいます。このヘ音記号は、ト音記号で表される音よりも低音の音に使われます。ベースとか、コントラバスとか…そういう楽器用ですね。
この二つの記号は、当然、その位置が上下すればドレミの位置も変わってしまうので注意が要ります。普通は上図の位置にて使われます。まあ、そんなところまで設定できるシーケンスソフトもないと思いますけどネ。
それから、おタマ一家について少し知っておかないといけません。
左側、上から、全音符、2分音符、4分音符、8分音符、16分音符、32分音符、…です。名前の通り、一つ下へ行くとその長さが半分になります。(そしてハタが増えていきます)右側は休符(その長さだけ待つ)ですが、全く同じです。全休符、2分休符、4分休符…と進むたびに、長さが半分になっていきます。
…そうそう、全休符と2分休符をよく間違えるんですよね。…まあ、コンピュータ上ではあましカンケーないですけどね。ま、全休符の方が長いから重い、重いからぶら下がる、だから線の下側に来るとでも思ってください。
さてこのうち、ふつう基本の長さとして使われるのは四分音符です。楽譜で四分音符=120、なんてのを見たことがあると思いますが、これは、1分間に四分音符が120コ演奏される速さで、ということです。…でも、そこいらへんはコンピュータではテンポ設定一発なので、あまり細かいことは考えなくてもよいでしょう。なお、コンピュータミュージックの方では、この四分音符をいくつに分解するか、でその表現の細かさを決めています。今のシーケンスソフトは大抵分解能480、すなわち四分音符一つを1/480した長さが最小の長さとなっているものが多いようです。
それから、ついでに付点を。
付点が一個着くと、今の音符の半分の長さがボーナスとして付いてくると思ってください。付点2コなら半分と、そのまた半分です。(半分+半分でもう一つゲット、なんてテレフォンショッピングみたいなことにはなりません)付点が付くたびに、前の付点(もしくは音符)の半分がくっついていくのですが…これも、2コ以上はあまり使わないでしょう。また、デュレーションという考え方をするコンピュータミュージックでは、あまりこの辺にこだわらなくてもいいです。面倒な音長計算をしなくても、ピアノロール画面で必要なところまでデロデロッと長さを引っ張ってやればそれで終わりなので。
さて、少し戻って、ドレミのおタマたちと、実際のピアノ等の鍵盤との関係を見ておきましょう。
いわゆる鍵盤楽器は、この図の通り白鍵と黒鍵を持つわけですが、見てみると、この場合、つまり『ハ』から始まるドレミ(もしくは、『イ』から始まるラシド…これは、次章で)の場合、おタマは全部白鍵を使っていますね。これが基本になります。
鍵盤は、シーケンスソフトがピアノロール表示を持っているのであれば使いますから、ここで覚えておくと、あとあと便利です。
さてこの時、白鍵黒鍵問わず隣り合っている鍵盤を1と数えると、各おタマたちがそれぞれ『いくつずつ離れているか』は、こんな風になります。
ミとファ、シとドだけが1だけ(白鍵→白鍵)離れていて、それ以外は2(白鍵→黒鍵→白鍵)離れていることになりますね。この時、1だけ離れていることを半音、2離れていることを全音と云います。そして、ドからその上のドまでは、図のように、全・全・半、全・全・全・半、という間隔を持っています。半音の位置が微妙にズレてることで、人間はその12音程を聞き分けてるんですねー。(これがもし全・全・半・全・全・半だったら、ミなんだかシなんだかわかんなくなっちゃいます)
さて、このままだと黒鍵がまったく必要ないですね。それだと実に楽なのですが…でもそう簡単にはコトは運ばないのです。…もっとも、そうだったとしたら、音楽はもっと味気ないものになってたでしょうから、鬱陶しいけれど、あったほうがいいのかも知れませんねぇ。
で、出てくるのがシャープ(#)とフラット(♭)です。それぞれ、ある音を半音[上げる/下げる]ためのアイテムです。例えば、図の赤い鍵盤はドのシャープ、またはレのフラット。同様に、青い鍵盤はソのシャープ、もしくはラのフラットです。…どっちで云うのかって?別に、どっちゃでも構わないのです。調だとか、前後の流れから、混乱しない方を使えばいいです。…ただ、楽譜の上では、
ある小節の中で、#や♭がつけられた音は、その小節の中ではずっと半音[上がった/下がった]まま
というルールがあるので、それに沿って使いやすい方を使えばいいのです。なお、上げたら上げっぱなし、下げたら下げっぱなしでは色々困るので、それを元の音に戻すにはナチュラルという記号を使います。…この辺は、コンピュータ上では自動的にやってくれますから、だいたい解っていればいいと思いますが、ここらの関係を絵に描くと、こんなふうになります。
ただこれは、小節とか移調とかの概念を持つ楽譜の上だけです。この講座の中で、文字で『ドレ#ミレ…』などとあったら、#や♭は直前(この例なら、一つ目のレだけ)の音にだけ効くと思ってください。ちょっとややこしいですが、こればっかりは概念の違いがあって仕方ないので…。(文字コードにナチュラルの記号もないですしね…)
そんなわけで、シャープとフラット、どっちを使う方がいいかという話に戻りますが、例えば、
"ララ#ララ#ラ"
というよりは、
"ラシ♭ラシ♭ラ"
の方が混乱が少ないでしょう。その程度でいいと思います。
単純に半音上げ下げ、というルールだけなら、例えばファはミのシャープであり、ミはファのフラットなのですが、あまりファのことを『ミ#』とは云いません。ファと云った方が早いからです。(笑)でも、移調によってキーが変わってる場合は、混乱を避けるために云うこともあります。そう、例えば、
"ミ♭ファソ♭ソ"
というと、ソの音がソ♭とソに重なっちゃって、楽譜上ではフラットとナチュラルのオンパレードになっちゃいます。それよりは、
"レ#ミ#ファ#ソ"
として扱う方が混乱が少ないからです。(…そうでもないか^^;)
同じく、ダブルシャープやダブルフラットなんてのもある(それぞれ、ある音を全音[上げる/下げる])んですが、こちらもあんまり必要ありません。というか、コンピュータで作曲するなら、そんなのは知らなくてもいいでしょう。他にも、たくさんの音楽記号がありますが、それらもおそらく、コンピュータの上では必要ではありません。というわけで、とりあえずおタマとその仲間たちに関しては、これくらいにしておきましょう。
Music Macro Language(MML)
MIDI、あるいはDTM(Desk Top Music=よーは、しろーとがPCを使って気軽に 曲をこさえることですね)というものがポピュラーな今は、そう苦労せず、かつ 割と安価に作曲・編曲を楽しむことが出来ますが、一昔前はそりゃあもう大変でした。 本格的なものをそろえようとするとウン十万は当たり前、ちょっと凝れば7ケタ台、 という時だったので、 とてもではないがシロートは手を出せなかったのです。んでどうしてたかというと、 貧弱な(当時は十分役に立ったんだい!!(><))8bitコンピュータに載っている音源ICを、 BASICという言語からコントロールして鳴らすわけです。最初は3重和音のみ、次に 3+3で6重、次いで6+3+6+1の高々16重。(当然エフェクトなどなにもない)
そして、演奏情報はといえば、BASIC言語のMMLを使って入力するのでした。これは、 文字で演奏情報を入力するための方法で、以下のようにCDEFGABを使って書くものです。
CMDPLAY "T128 O5L8 E2<G>ERF&F2&FF4F E2<G>ERD&D2CRDR"
…わかんない人にはなんのことやらわけわかですね。カンタンに云うと、Tはテンポ指定、 Oはオクターブ指定、Lはデフォルトの音長指定(この場合音長がなければ8分音符/休符)、 アルファベットと数字は、その音をその長さで鳴らすことを意味し、Rは休符、 &はタイ(スラー)といった具合です。<>はそれぞれオクターブを相対的に 下/上へ動かすことを 意味するのですが、これがBASICの種類によっては逆だったりして、別の機種に そのまま持っていったらとんでもない演奏になってしまった、なんてのもありました。 なお、この上のMMLは、いつかどこかで の出だしです。
こうやって、テキストでしこしこ書いて、演奏してみて、間違ってたら(大体最初は メチャクチャな鳴り方をする)一つずつ追って、音長を計算し、ノートを計算し、書き直し… とやっていくんですね。後期にはP.M.D.(Professional Music Driver)なる、ある方が 作られたMMLライクな演奏ソフトも出てきて、これで色々作った覚えがあります。この PMDはものすごく優秀なソフトで、これで出来ないことは まずありませんでした。(ただ、メモリ領域の都合であまり大きなのは作れなかった が…(><)※1)
実は、今でもこんな風にMMLライクに作曲するソフトがあります。その名もMML2MID。 ベクターなどの有名なサイトに行けばすぐ見つかるでしょう。
※1 過去にスーパーハングオンを作り込んだことがあるのだが、あまりにデータが 多くなりすぎてメモリが足りなくなり、泣く泣く後半のコードを削り落として ムリヤリ1ループにした。そのために後半コードがスカスカ、ということがあったのだ。 …もっとも、繋いでいたスピーカーが悪かったために、別のスピーカーに変えて 聞いてみたら、音のバランスがムチャクチャだったのだけれどね……。 (T▽T)