さてさて…はやいところ、なにかをやってみたいところではありますが…もう少し、基礎をやっておきましょうか。ホントに基礎だけです。ここで理論だけを続けるのは本末転倒ですし…そんなの、市販の本を読めば済むことですからネ。
曲を作る上でもっとも大事なことの一つは、『調』です。短調、長調くらいは聞いたことがありますよね?そう、聴いてて楽しいのが長調、悲しいのが短調です。…乱暴すぎますか?では、ドから始まってドで終わるのが長調、ラから始まってラで終わるのが短調です。――これも、ラフすぎますねぇ。では、厳密に云うと、そのスケールが『全全半・全全全半』という並び方(前章を見てくださいね)をしているときは長調、『全半・全全半・全全』という並び方をしているときは短調となります。見てみましょう。上が長調のスケール、下が短調のスケールになります。上の調はハ長調、下の調はイ短調です。
ところで、スケールってなんでしょう?カンタンに云うと、曲中、オタマジャクシたちは通常、その7つの音だけを行き来する、その基本の7音のことです。日本語では音階といいます。例えばハ長調なら、メロディもコードも基本的に『ドレミファソラシ』の上だけを行き来するのです。もちろん進行によって#や♭がついて外れることはままあるわけですが、とにかく、この七音がその曲の基本となるのです。
そして、そのスケールが『全全半・全全全半』なのか『全半・全全半・全全』なのかで長調か短調かがきまり、そしてその最初の音、図の上ならド(ハの音)、図の下ならラ(イの音)によって、ほげ長調とかほげ短調とかいうのが決まるわけです。
…じゃあ、もし、上の『ドレミファソラシド』を、『全半・全全半・全全』に変えてみたら?
グッドクエスチョンです。やってみましょう。
こんな風になります。最初のハ長調と比べると、ミ、ラ、シが半音ずつ下がって、結果として『全半・全全半・全全』になりました。そしてこのスケールのために使われる鍵盤は、白鍵ばかりでなく、黒鍵も必要となり、それは図の青い部分になります。
これは、『ハ短調』です。最初の上の絵と同じく、『ハ』の音から始まっているにもかかわらず、聞いてみると悲しい感じがします。つまりこれは短調なんですね。この場合なら、メロディやコードは『ドレミ♭ファソラ♭シ♭』という7つの音(イロハで云うと、『ハニホ♭ヘトイ♭ロ♭』になりますね)の上を行き来して、そして結果として『ラシドレミファソラ』と鳴っているように聞こえます。(『移動ド』の話を思い出してください)
そして、これが移調の概念になります。『キー』と云った方がわかりやすいですか?カラオケで、声が高すぎて歌えないとき、『キーを下げ』たりしますね。あれはこんなふうに、『ドレミファ…』もしくは『ラシドレ…』の関係を保ちながら、全体を上げ下げしてるんですね。上の図で、イ短調とハ短調を比べると、『全音+半音』分だけハ短調の方が全体的に高いわけです。
そんなわけで、『どの音から始まるか』で12種類、『それが短調か長調か』で2パターン、合計24の『ほげほげ調』が存在します。…でも、最初のうちはあまりややこしいとイヤになるので、とりあえず、長調なら『ハ長調』、短調なら『イ短調』に絞って見ていきましょう。これだと使うのは白鍵だけだし、『固定ド』と『移動ド』が一致するので、少しは解りやすいでしょう。#が幾つ付くと何調になるというのは、ここでは宿題にしますね。興味があったらその手の本を読む、程度でいいでしょう。
では、『曲というのは、基本的に決められた7音の上を行き来するものだ』ということが解ったところで、もう少しスケールについて掘り下げて見てみましょう。
その曲が長調の時は、メロディやコードは、ハ長調の図で示したように、#も♭もつかない『ドレミファソラシド』の上を行き来するということを云いました。これが、短調になった場合、少し違ってくるのです。
まず一つ目は最初に示したイ短調の音階です。『自然的短音階』と云います。サンプルはイ短調のそれを聴いてください。
わりと普通…ですね。というか、ちょっと物足りない気もしますね。
次にこれです。これを『和声的短音階』と云います。『白鍵しか使わない』と云ったくせに、ソに#が付いてますね…まあ、ウソつきという前に、聴いてみましょう…なんだか、一気に悲しさが増した気がしませんか?
さらに、こちらです。『旋律的短音階』という思わしげな名が付いています。今度はファにまで#が付いてますね。聴いてみると、スムースな流れで、かつ悲しい感じがします。『旋律的』と謳うのもわかる気がしますね。
ところで、この旋律的短音階、上がってくるときは図のようにファとソに#が付くのですが、『下がるときには#が消えて、「ラソファミレドシラ」となる』と説明してある本が多いです。確かに、そうなのですが…ワタシは、こだわらなくてもいいと思っています。というか…それを決めるのは、自分、ということでいいんじゃないでしょうか。曲調や雰囲気で、自分が思ったとおりに曲を書いて、その結果が過去の慣習を破っていても、それはそれでOKじゃないかなと。…芸術に、絶対なんて言葉はないわけだし、逆に云えば、ヒトと違うことやってナンボ、みたいな部分もあるわけですからネ。
さて、どうしてこういう風に#が付いちゃったりするのかというと、あとで述べるコード進行に絡んでくるからなのです。V度のコードからI度のコードに終止するとき、V度のコード中に、スケールにない音、つまり『ソ#』が入ってくるから、こんな風に動いてしまうのです。――何を云ってるのかわかりませんね。今は『ああ、そういうものなんだな』と思ってください。これについては、またコードの所で説明しますからネ。
さてさて、こんなふうに、短調の場合は、その曲の流れによって、ファやソが半音上がることがあるということがわかりました。でもこれは、理屈というより、普通に創っていくと自然にそうなっていくのです。今はわからないかもしれませんが、これはわりと簡単な考えだと思うので、すぐにわかるようになります。
ここまででわかったのは、
ですね。
- 曲は、ある並びの7音の上を行き来すること
- その7音は、大きく長調と短調とにわかれること
- その全体が上下に動くのが移調であること
- 短調には、いくつかのパターンがあること
さて、ここでもう一つだけ、覚えておくと便利なのがあるので見ておきましょう。
(1)はド(ハ)から始まってるのでハ長調、(2)はラ(イ)から始まってるのでイ短調のようですが、おタマの数がさっきと比べて少ないですね。5つしかありません。(一番後ろは、最初の音のオクターブ違いなので、最初の音と同じと考えてください)
なにが足りないのでしょうか。じ〜っと見てみましょう。じ〜〜〜っ………(1)は、ファとシがいませんね。(2)は…(2)も一緒です。ファとシがいません。
この、『ドレミソラ』だけで構成されるスケールを、ペンタトニックスケールと云います。『ペンタ』は『5』を表す言葉です。(ペンティアム、ペンタゴン…どちらも『5』に関係していますね)おタマが5つだけなのでこう云います。(これに対して、これまで見てきた7音で構成される音階をヘプタトニックスケールと云いますが、この言葉は別に覚えなくていいです)このペンタトニックスケールは、実に色々なところで使われるのですが、代表的なところではロックでしょうか。少々強引に進めても大概合うので、知っていると便利です。
ワタシの作品では…そうですね、いつかどこかでの二ループ目、メロディを挙げてみましょうか。(原曲は変ロ長調、つまりシ♭がドに聞こえます)聞こえかたとしては、『ラドドラドラドレ ーレドレッドレミ ーーソミーミレレ ーーレドーーーー……』です。ファとシが入っていませんね。こんなふうに、ドレミソラの五音というのは大変結びつきが強く、その音がコードから外れていても合っているように聞こえることが多いです。実際、上のメロディでも、赤で示したソの音は、コードから外れた音なのですが、そんなに変には聞こえませんよね。
短調の場合も同じです。例を聴いてみましょう。曲の最後、『ジャジャジャン♪』と鳴る所に注目(注聴か?)して下さい。
例1 例1の方が断然カッコ良くないですか?例2はなんだかなよっとしてますよね…。1は『ミソラ』、2は『ファソラ』と鳴っているわけですが、こんなふうにちょっとしたところにでも使えます。かなり便利です。――下の譜はおマケで、キーは無視で移動ド、アメリカで放送されているポケモンのテーマソングの一部。元の曲はロック調の曲です。参考まで。
例2
さて、これまで調と音階について見てきました。もちろん、まだまだ説明してないこともありますし、ここで出した以外の音階もたくさんあるのですが、それは応用の範囲ですから、ペンディングとして、次に進みましょう。
四七抜き音階
『金魚〜え〜金魚っ』
『竹や〜竿竹っ』
どちらも日本人にはおなじみのメロディですね。…え?トーフ屋のラッパなら知ってる?今 トーフ屋はどうでもいいのです。…ん?知らない?う〜ん……もう最近は こんなの、聞かなくなっちゃいましたもんねぇ。ちょっと寂しかったりもしますが… とりあえず、メロディを載せてみましょうか。両方とも、ミ、ソ、ラの音だけで構成されていますね。
実は、こんな、日本に昔からあるメロディというのは、以下のようなスケールに 基づいて作られていることが多いのです。
ドレミソラド、四番目の『ファ』と七番目の『シ』が抜けていますね。だからこの 音階を『ヨナヌキ音階』と云います。…ん?どこかでみたスケールですね… そうそう、上に書いてあった、ペンタトニックスケールとまったく同じなのです。 日本古来の音階と、ロックの音階が同じなんて、ちょっと不思議じゃないですか?
上に書いたスケールは長調の場合ですが、短調でも同じことが云えます。
この場合だと、『レ』と『ソ』が抜けてます。こちらは上で紹介したペンタトニックとは 少し違いますね。(でも、これも五音で構成されているからペンタトニックには違いない のですけどね)
――これらのスケールは、あるジャンルで頻繁に聞くことが出来ます。なんだと思います? ――実は、演歌なんです。演歌には、このスケールが頻繁に登場します。一度機会が あったら(あるのか!?)よく聴いてみてください。すぐわかると思います。
とりあえず、すごくカンタンなものですが、サンプルを作ってみました。演歌っぽいで しょう?
長調・演歌風
短調・演歌風