前の章で、大体基本は解ったでしょうか。なんにもやったことなくてよくわかんなければ、とりあえずスリーコードのみで進めてみると良いでしょう。そうすると、そのうち進行に飽きてきます。そうしたら今度はいくつかを基本7コード(実際によく使うのは5つのメジャー/マイナートライアドと、V度のセブンスになりますが)で置き換えてみるとよいでしょう。
しかしながら、それでも結局そのうち飽きてきます。メジャートライアド、マイナートライアドは大変きれいに響き、落ち着きがあるのですが、あまりにきれいであるため飽きも早いのです。
もちろん、常に基本はメジャー/マイナートライアドです。でも、あまりにきれいすぎる進行はかえって飽きてしまうものです。全部がきれいであるよりも、数カ所に濁りがある方が、かえってきれいさが引き立つものです。スイカに塩、アレと一緒ですね。
そこで登場してくるのが、他のコードたちなのです。
もっとも、先にも述べましたが、コードやコード論をやっているといつまでたっても終わらないので、幾つかのよく使うものと便利な用法のみにとどめることにします。それをいかに活用して、そして発展させていくか――それは、それを使う人次第です。
以下では、なるべくC、もしくはAmを元にして説明します。当然、そのルートの違いだけ(つまり、C〜Bまでの12種類)同じ種類のコードが存在します。例えば、メジャートライアドにはCもFも在りますね。同様に、sus4はCsus4及びAsus4として紹介していますが、C#sus4もあればDsus4もあれば…と、ルートの分だけ同じコードが存在します。…でも、心配しないでください。基本さえ解っていれば難しくはありません。
セブンス(Seventh)
トライアドは3つの音が重なっています。でも3つでは物足りない…なら、4つにしちゃえ!!ってカンジで、4つ重ねてしまったのがセブンスです。
この時普通、4つ目の音は、スケール上の音を重ねます。その方が自然だからです。但し曲の進行如何によってはあえてスケールにない音を重ねることもありますが、それはその人の感性次第…頑張ってネ☆――では、不親切なので、説明しましょう。
7度離れた音は、基本的に長7度と短7度があるのでしたね。そして、それを重ねるトライアドには、メジャーとマイナーがありますね。従い、2通りの7度×2通りのトライアド ということで、4種類のセブンスがあると思ってください。それらをここに示しますね。
まず、その重ね方によって2種類のセブンスがあることを知ってください。上段にC7とCM7、下段にAm7とAmM7を出してみました。呼び方は以下のとおりです。()内は別の呼び方で、ここ以降はこちらの呼び方を使うことにします。(ドミナントであることがはっきりして判りやすいからです)
・C7...シー・セブンス(シー・ドミナント・セブンス)
・CM7...シー・メジャー・セブンス
・Am7...エー・マイナー・セブンス
・AmM7...エー・マイナー・メジャー・セブンス
ややこしくて、イキナリイヤになりますね。でも、もうちょっと頑張ってみましょう。
まず、『ほげメジャーセブンス』と名前が付いている場合、7度の音(CM7ならシ、AmM7ならソ#です)が、ルートに対して長7度離れているということを意味します。
残りは、『ほげセブンス』『ほげマイナーセブンス』なわけですが、これらをよく見ると、『ほげ』『ほげマイナー』については、そのトライアドが何か、を意味しているだけで、セブンス自体は『セブンス』としか云っていません。つまり、セブンスについては、『セブンス』『メジャーセブンス』の2通りしかないわけです。そして、『セブンス』という表記の場合、セブンスの音についてはルートから短7度の位置になります。判りますか?
表にしてみると、こうなります。
C7 シー セブンス CM7 シー メジャーセブンス Am7 エーマイナー セブンス AmM7 エーマイナー メジャーセブンス
まあ、大切なのは名前ではなく、それがどういう響きか、その時どういう音から構成されているか、ということです。名前なんか憶えなくてもいいです。それがどういう音から構成されるのか、その本質を握ってください。
さて、ここまで来たのですが、マイナーメジャーセブンスについては、ここでは割愛します。というのは、これ、あんまり使わないんです。必要になったら学んでみてください。
セブンスの特徴は、その名が示すセブンスの音が、ルートと不協和音の関係にあることから、緊張感のある響きを持つことです。特に、メジャーセブンスの方は、ルートと7thの音が短2度(CM7なら、ドとシ)であることから、きりっとした響きを持っています。
長調のIV度のメジャーセブンス(ハ長調のFM7)及び短調のVI度のメジャーセブンス(イ短調のFM7)は、スケールに乗る音だけで構成されているにも関わらず音がピリッと響くため、しょっちゅう使われます。ゲティもこの音は好きです。
また、マイナーセブンスは、こちらもスケール上の音のみで構成され、クールに響きます。イ短調でAm7、Dm7、Em7なんてカンタンに使えて効果的ですね。
ドミナントセブンスについては、その特徴についてこらむにまとめたので、そちらをどうぞ。
一方で、マイナーメジャーセブンスは、サードとセブンスがモロにぶつかるので、使いにくいです。少なくともゲティは殆ど使いません。
そうそう、進行としては、あるトライアドから見て、3度下の『スケールに乗る音だけから成る』セブンスは、そのルートが増えるだけで響きが変わらないので、メロディを繰り返しながら3度下へ移動する、なんて進行はよく現れます。例として、Am→FM7(移動ド)を挙げておきます。鳴る音は『ラドミ』から『ファラドミ』です。
下のスコアはDeeper Deeperからですが、このケースでは、『ラドミ』『ファラドミ』から更に下へ動いて『レファラドミ』としてますネ。ま、参考まで。
シックス(Sixth)
同じ4つの音を重ねるのでも、7度の音ではなく6度の音を重ねたのがシックスです。この場合、種類は二つ、メジャー・シックスと、マイナー・シックスです。この時、重ねる6度の音はまず長6度となります。従い、メジャーとマイナーの差は、そのトライアドがメジャーかマイナーか、ということです。ここではC6(シー・メジャー・シックス)とDm6(ディー・マイナー・シックス)を紹介しますね。両方ともスケールに乗る6度の音を使うのだと思っていれば、大きなミスはないでしょう。それをあえて外して印象的な音にするか否かは、みなさんの使い方次第です。
ここで、賢明な方は気付くかもしれません。
C6って、Am7と鳴ってる音はいっしょじゃん。
その通りです。…まあ、通常は、ベースがどこで鳴ってるか、を基準(根音)と考えて、その音のコードとして扱うのですが…ベースをわざとルートでない音で鳴らす場合もある(オンベースと云います)ので、これも絶対ではありません。…でも、大事なのはコードネームではありません。あなたが考えた雰囲気に合う音が、『ラドミソ』である、ということなのです。それが楽譜の表記上、C6だったろうがAm7だったろうがいいじゃないですか。
ナインス(Nineth)
セブンスに対してもういっちょ乗っけちゃえ、ってのがナインスです。5個組みです。(別段なんとかレンジャーとか叫ぶわけではない)
乗せるのは主にメジャー・ナインス=長9度、云い換えれば長2度です。だから、この場合も、乗せるセブンスがメジャーセブンスならメジャーナインスに、マイナーセブンスならマイナーナインスになるわけです。…ま、セブンスに対して、そのまま3度上の音を積んだだけですね。シャープもフラットもつかないので、判りやすいでしょう。
これらはセブンスの音及びナインスの音がモロにルート・サードにぶつかるので、セブンスと比べてやや濁りが目立つ半面、緊張感と明るさはこちらが上という気がします。そのぶつかり合いの性質上、クローズドコードで使うとものすごく濁るので、オープンにして使うことも多いでしょう。(クローズドコード・オープンコードについてはこらむで)
さて、これだけでは足りませんで、もう二つ紹介しておきます。大分ややこしくなってきていますが、しばしご辛抱を。
これらは、共にドミナント・セブンスに9度を重ねています。わかりますか?左はハ長調のG7が元で、これをドミナント・ナインス、右はイ短調のE7が元で、これをドミナント・フラット・ナインスと呼びます。どちらも、ドミナントセブンスの上に、スケール上のナインスを重ねているだけです。左は長6度であるラを重ねて『ソシレファラ』に、、右は短6度であるファを重ねて『ミソ#シレファ』となっていますね。
さあ、ちょっと判りづらくなってきましたね。乱暴に云うと、とりあえずスケール上の9度を重ねておけばオッケーです。スケールを外した音を加えることもありますが(最近ワタシはハ長調でG7♭9(ソシレファラ♭)を使うことがあります)例によって、当たればインパクト抜群になりますが、外して濁る確率も高くなりますので、最初は考えなくてもいいでしょう。
サスフォー(sus4)
正式には、サスペンデッドフォース(suspended 4th)です。でも長いんで、『サスフォー』と略されてしまいます。それにしても『ぶらさげられた4th』とはHUNTER x HUNTERの念みたいな名前ですが、それはともかくいい響きをするコードです。
左はCsus4(シー・サスフォー)、右はAsus4(エー・サスフォー)です。メジャーとマイナーのトライアドからサードを消して、完全4度(フォース)に置き換えてあります。つまり、サードの音を上にちょいっと上げたわけですね。コードの属性を決めるサードが消えることからコード自体は不安定になりますが、ルートとフォース、ルートとフィフスがいずれも完全の関係、またフォースとフィフスは長2度のぶつかりということで、緊張感を含む響きとなります。そしてこれから、ある音のsus4は、その音をルートとするメジャー、あるいはマイナートライアドに移るとすっきりします。
ワタシはこの音が好きで、しょっちゅう使います。(実際には次の、セブンサスフォーで使いますけどね)元のトライアドに戻りたくてうずうずしているので戻しても良し、Csus4→Dsus4→Esus4なんて感じでウラをかいて引っ張っても良し。『オイオイ、また解決しねぇよ』と聞き手を悶々とさせること請け合いです。
さらには、以下の使い方もあります。
ドミナントセブンスに対してサスフォーのルールを適用したものです。同様に、サードの音を一度上に上げて、完全4度にしてありますね。
この音は非常にムズムズ感の強い音です。なんでムズムズするかというと、元のドミナントセブンスに戻りたいんです。だから、
G7sus4→G7→Cこんな風に、ドミナントセブンスの前にシーサスフォーを放り込んでやると、キモチ良く移動できるんです。ゲティの曲にはこれが頻繁に出てきます。だって好きなんだもん。(笑)ってぇわけで、下は『おむかえフィム』のサビから。
E7sus4→E7→Am
ディミニッシュ(dim)・オーギュメント(aug)
トライアドは基本的に長3度+短3度(短3度+長3度)という形になっていますね。ではこれを、短3度+短3度にしたら?
これがディミニッシュです。左のコードで、ルートとフィフスの関係を見てください。シとファ、つまり増4度(減5度)にあたります。これは不協和音だったんですよね。実際に聞いてみると、ものすごく不安定な音ですね。それだけに、馴れないと使いづらいです。
ハ長調、イ短調で考えると、ちょうどBの上に乗せたコードがこれに当たります。つまりBdimになるわけですね。でもこのコード、使いにくいのであんまり使いません。(クラシックや、不安感をあおるシーンでの映画音楽ならともかく…)
むしろ、スケールの音を外してでも、BやBmにして使うことの方が多いぐらいです。
…ただ、このディミニッシュ、使いどころは難しいのですが、キモにはまるとものすごくキレイに響くときがあります。(不安定であるということは、次に安定したコードを持ってくれば、それをより引き立たせるということです)
これにももちろんセブンスはあるのですが、こちらはもう省略します。
また、同じ考えで、今度は広げてみましょう。すなわち、長3度+長3度です。
これがオーギュメントになります。上の図では右のコードです。ルートとフィフスはドとソ#で増5度(減4度)の関係となり、ディミニッシュ同様ぶつかり合うため、やっぱり不安定に響きます。
で、やっぱりあんまり使わないです。ジングルなんかでは使いどころもあるでしょうけど…。唯一の例として、デミーの200mリタイア(23KB)のジングルで使っています。
その他
他にも色々あります。イレヴンス、サーティーンス、それらの派生コード…でも、やっぱり重ねれば重ねるほど音がぶつかるので、使い方が難しくなっていきます。とりあえず馴れない人は、セブンスまでということにしておいてもいいでしょう。
また、addなにがしというのもあります。その名の通り、カンケーない音をぽつっと置くわけです。例えば、Amadd2といえば、Aマイナーの『ラドミ』に、2度である『シ』を加えた『ラシドミ』になるわけです。
不協和音である長短2度のぶつかりがさらに隣同士でぶつかるので、長く弾くととても濁って聞こえます。反面、ポイントポイントで『ジャッ』と一瞬弾くと、わりと歯切れよく聞こえたりします。
ここで最後に、sus2を紹介しておきます。(前章で出ていましたね)
これは、add2として、2度を加え、サードを外したものと同じですが、サスツーと云ってもよいようです。…まあ呼び方はどうでもいいです。大事なのは音です。
これは、乱暴にいえば、sus4の逆です。sus4を天地ひっくり返すとsus2になるわけです。だからsus4同様、トライアド(メジャー・マイナー)に戻ればスッキリします。
これと、sus4を使って、こんな風に、
真ん中だけを振ってみる、なんてのもよく見かけるパターンです。うまく使って、カッコイイフレーズにしてください。
さて、ひととおりコードを見てきました。ややこしかったですね。
コード進行というのは、そんなにカンタンなものではなくて、例えば単体で明るく聞こえるものが組み合わせてみるととても悲しく聞こえるだとか、なかなか、一筋縄では行かないのです。単純な例として、ドミナントコードは単体では明るく聞こえますが、その次がマイナーのトニック(Amなどですね)だと、その寂しさをとても浮きだたせます。
…とにかく、どのコードからどれに繋がる、といったものはそう簡単ではないのですね。この辺は、一朝一夕でどうにかなるものではないので、少しずつ学んでいくしかないでしょう。とりあえず、ここにあることを知識として頭の片隅に置いておいて、それを少しずつ理解へと変えていってください。
ドッペルドミナント
ドッペルゲンガーって知ってますか?
自分自身が自分の前に現れる現象や、あるいはそれをモチーフにしたモンスターのことです。
見ると死んじゃうらしいですね。
ドミナントモーションが、『ドミナント(V度のメジャーセブンス)から、トニック(I度のトライアド)』に移る進行であるということは既に述べました。
じゃあ、この進行を、V度→I度以外でもやってみたらどうなるんだろう?
やってみましょう。下の図を見てみてください。
これはかぶゲームの一部です。
この進行で、中央にC7→Fという部分がありますね。
見ての通り、C7はドミナントセブンスです。その中には、スケールに乗らないB♭がいます。(ここでは、ベースも同じB♭にしていますので、正確にはC7 on B♭というルートオンベースコードになります。コードはC7だがベースはルートではなくB♭だよ、という意味です)これはもちろんCメジャーキーのドミナントコードではありません。でも、この音を聞いたときになんだかムズムズして、そして次のFを聞くとすっきりしますね?(しない?してください)
これは、G7→C の進行を、下へ完全5度分だけ下げたものにあたります。つまり進行それ自体は、ドミナントモーションと全く同じなのです。
C7はドミナントではない、しかしC7→Fの振舞いはあたかもドミナントモーションに酷似している――なので、これを『ドミナントモーションのマネ』ということで、ドッペルドミナントと呼ぶのです。
これを憶えておくと色々便利です。特に、次にこのコードに移動したい!!というとき、そのコードに対するドッペルドミナントを放り込んでやると自然に移動できます(もっとも、今のコードからそのドッペルドミナントへ移るときにムリヤリ移っていては意味がないのですが…)し、また、あるキーのドミナントコード以外のドミナントセブンス(解りますか?)は、必ずそのスケールに乗らない音が入ります(上の例ではB♭がそれに当たります)から、インパクトを与えることもできます。
ちょっと進行に困ったときなど、ぜひ使ってみてください。
下に、ゲティがよく使うものを挙げておきますね。(以下では長調としてCメジャー、短調としてAマイナーを選んで述べています)
C7→F、Fm
シ♭の響きが特徴的で、使いやすいです。
D7→G
D7→G7というのはよく使います。Cメジャーならドミナント前のドッペルドミナント、Aマイナーでもわりと使えます。
E7→Am
Aマイナーのドミナントモーションですが、Cメジャーでドッペルドミナントとして使ったっていいのです。
G7→C
同様に、Cメジャーのドミナントモーションですが、これをAマイナーで使えばドッペルドミナントになります。
A7→Dm、D
通常のAmと比べて、ドの音がド#となります。Aマイナーで使うとかなり悲しさが増しますが、Cメジャーで使うと一味違った明るさが得られます。
B7→Em、E
シレ#ファ#ラ と、レとファの二音がスケールから外れるため、ちょっとわざとらしい感じがしがちなのですが、Aマイナーで、ドミナントのE7に移る前にかませたりするとスムースに動きます。
で、これらを組み合わせて使うことも出来ます。例えば、
A7→D7→G7→C
なんて感じですね。
また、すでに学んだ、sus4を噛ませるのもいいですね。
A7→D7→G7sus4 G7→C
こんな感じですか。
まあ、その進行がスムースである分、使いすぎるとくどくなるというか、流れすぎてしまうのですが、ポイントをさだめて使えば便利な武器になるでしょう。
では、最後に宿題です。かぶゲームでは、あと二か所、ドッペルドミナントを使っています。それはどこでしょう?…もう判りますよね。あそこです、ア・ソ・コゥ