画家
新開 諭氏(61)
津市安濃町浄土寺
新開流≠フ描き方極めたい
容疑者逮捕の貴重な手がかりとなる似顔絵¢{査。「目撃者から的確に特徴を聞き出す話術と、それを表現するデッサン力が必要」と話す。
三重県警の警察官時代には、似顔絵での検挙第一号を果たし、退職した現在も似顔絵捜査員≠フ講習会で講師を務めている。
亀山市出身で四人きょうだいの二男。中学時代の恩師・西森格四郎先生(故人)との出会いで「画家になりたい」という夢を持ったが、家庭の事情で美術大学への進学を断念。働きながら夜間高校を卒業、警察官になった。
警察では、交通関係部署の勤務が多かった。白バイを運転して駅伝の先導、皇族の警護にあたったり、技術を競う全国大会へも出場したことも。それでも絵への思いは捨てず、時間を見付けては描き続けた。
二十二年前、県警で似顔絵捜査の講習会が初めて開かれて受講。当時講師をしていた駒田治夫氏(故人)は、同じ美術教室に通っていたこともあって、翌年から助手を担当。同氏の死後、講師を引き継いでいる。
似顔絵検挙の第一号になった後も、ひき逃げや保険金詐欺、当て逃げなど、様々なケースで功績を。「新開さんの描いた似顔絵と一緒やで」と喜ばれると、絵を続けてきて良かった−と改めて思った。
三人の娘を嫁がせたのを機に、自分の人生を見直した。平成十一年に「今度は、やりたいことをして生きていきたい」と退職、長年の夢だった画家に転身した。
「退職したら時間を気にせず思い切り絵が描ける」と一年間で三百六十五枚の制作を目標にした。
中学時代からの憧れだった向井潤吉氏(故人)のような田舎の風景。これらを好んで描いているが、県内からかやぶき屋根≠フ風景がなくなったことにさみしさを覚えるという。
今は京都や滋賀など県外へ出掛けて制作しており、壁にぶつかった時は、ドライブしながら美術館を巡って作品を鑑賞。自分なりのヒントを見つけ出している。
県内外で二十数回の個展を開く一方で、住んでいる安濃町(現・津市)へ恩返ししたい―と、公民館長を二年間したり、文化協会を立ち上げるなど、文化の面でも協力。十年ほど前からは中央公民館で絵画教室の講師もしている。
「デッサン力で負けたくない。絵を見ただけで自分の作品だとわかってもらえるような新開流≠フ描き方を極めていきたい」と話していた。
画家のほか書家としての一面も。来月二十八日から四月十二日までかめやま美術館で開く個展では、四季の風景がテーマ。水彩画を中心に展示する予定。
(内田 敬子)
H19.2.28 第289号
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