(社)茶道裏千家淡交会 参事・東海地区委員長
三重中京大学 入試センター参与
淺沼博氏(65)(茶名・宗博)
伊勢市神田久志本町

良い感性は喜びや感動に



 「氷が溶けたら、何になると思いますか?普通は水≠ニ答えますが、以前、こう答えた子がいました。氷が溶けたら、春になる=vと話す。


 素晴らしい感性は喜びや感動につながる。今年から松阪市内で茶道の子ども教室を始めた。茶の湯の普及と若者の心の育成に尽くしている。


 松阪市出身。「母がお茶の先生でしたので、小学生のころからおけいこを。座りだこは何回切ったかわかりません」。


 宗家の直轄団体である同会で愛知、岐阜、三重、静岡の十二支部をまとめる東海地区委員長。愛・地球博(愛知万博)では、会場内の茶室でベルギー皇太子や各国要人にお点前を披露した。


 しかし高校の教諭時代は、野球部監督や部長として野球漬け≠フ毎日だったという経歴。赴任先の伊勢工業高校を強豪校に育て上げた。昭和六十三年には責任教師として、学校創立以来初の甲子園出場を果たした。


 「野球や生徒から多くを学びました。チームワークや犠牲的精神は、和を重んじる茶道に通じるところがあるんです」。


 一方で、茶道部を創部し、茶室の設置に奔走。昭和五十年代初め、全国の高校で始まった必修クラブに茶道が取り入れられ、裏千家総本部が担当したカリキュラムや副読本の作成、条件整備に携わった。高校の総合学習で茶道を体験した生徒は十万人に上る。


 げたのそろえ方、客へのもてなし、立ち居振る舞いなど茶道の所作は、昔は日常生活そのものだった。


 若者の価値観が多様化した現在、茶道を通じて目上の人や両親を大切にする心、花を見て美しいと思う気持ちを持った品格ある女子学生を育てたいーという。


 「一期一会」は、どの茶会も人生に一度と思って心を尽くそうという茶道の心得。「これを毎日出会う人に出せるかどうか。その裏にある感謝の世界を伝えていきたい」。


 宇治山田高校校長を経て、現在は三重中京大学入試センターで、高校と大学の連携事業などに当たり、地域の教育力向上にも取り組む。 


 華道の家元や教育関係者らと設立した「松阪伝統文化継承の会」会長、NPO法人五十鈴塾(伊勢市)の会長兼指導者。


 趣味は長唄の三味線。最近は忙しくて機会がないが、「日曜の昼、テレビののど自慢を見ながら缶ビールを飲むのが至福のとき」と笑う。


 二人の子どもは独立し、妻けい子さん(62)と二人暮らし。


(福家 明子)


H19.3.28 第291号


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