多賀輝宏氏(70)
NPO法人三重補助犬普及協会理事長
津市大門 市民活動センター内
補助犬の普及活動に尽力
平成十四年十月、身体障害者補助犬法が施行されたのを機に同協会を設立。盲導犬をはじめとする補助犬の普及活動のほか、イベントを通じ目の不自由な人の自立と社会参加を支援している。
会社員だった四十二歳のとき、網膜色素変性症により仕事に支障が出始め、六十歳を前に視力を失った。十五年間は白杖を使い、補助犬法が始まった翌年にラブラドール・レトリバーの盲導犬、クロス(雄)がやって来た。
法律によって、公共施設や交通機関に補助犬を同伴できるようになり、現在ではデパートや飲食店、ホテルなど一般的な施設でも認められている。しかし当時は、受け入れが整った場所はほとんどなく、後進的な印象だったという。
目の不自由な人は県内に約五千人いて、その約一割が全盲だが盲導犬は十二頭だけ。行政や社会に理解を求める一方で、課題は当事者側にもあると指摘する。
自分の世界に閉じこもる、「危険だから」「心配だから」と家族が外出を許さない、盲導犬への間違った認識など。「盲導犬はスーパードッグじゃない。指示を出す本人が周囲に声をかけたり、道を尋ねる力をつけなければ」と精神的な自立を呼び掛ける。
多賀さんもクロスとの外出では道に迷い、思いもよらないハプニングも。交通事故や歩行中に転倒してけがをしたこともある。この夏、市内の百貨店の協力で、目の不自由な人が付き添いに頼り過ぎず買い物をする体験会を実施した。
「自立と社会参加は人間として、社会人として生きた証になる。生を全うしてほしい。そのためにも盲導犬が必要」と訴える。
クロスは来月で八歳になる。やんちゃな性格だが、最近は落ち着いてきて多賀さんとの息もぴったり。「夜中にトイレに行くと、出て来るときにはクロスが入り口で待っていてくれるんです。さっきまでグーグーといびきをかいて寝ていたのにね。わたしの元に来て五年になりますが、いとおしいですよ。心の支えです」。
困っている人がいても見て見ぬ振りをする人が増えたとする現代の風潮に「そうではないと思う。方法を知らないだけ。どう声を掛ければいいかわからない、もし失礼だったらどうしよう?決して思いやりがないわけではないんです。経験を通じて、人の心情を知ることができました」と笑う。
趣味はゴルフやフォークギターなど多彩。激流や急流を下るラフティングを楽しむため毎年、北海道・尻別川を訪れている。
県ユニバーサルデザインアドバイザー。同市雲出本郷町の自宅で一人暮らし。(福家 明子)
H19.10.10 第300号
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