クラギ
代表取締役社長
竹内 秀樹氏(46)
松阪市川井町

日本初の農業用品専門店



 「農業屋」と言ったほうが、ピンと来るかもしれない。大きなひよこ≠フマークを掲げた農業用品の専門店。県内のみならず東海・近畿地区にも出店し、約四十店舗を展開している。三十六歳で社長に就任して十年。時代に合ったサービスを模索して、農業の可能性を広げている。


 創業はさかのぼること約四百年前。徳川家康が征夷大将軍に任ぜられ、江戸幕府が開かれた慶長八年(一六〇三年)、松阪・新町で倉田儀八さんが始めた「倉田儀八商店」が始まりという。


 「一番古い記録は明治四十四年。名前は倉儀(くらぎ)商店となっています。種の商品目録や就業規則が残っているんですよ」。


 竹内社長は大学卒業後に入社し、先代の父と「農業屋」の出店で奔走したが、事業の拡大につれ、それを良く思わない外部から圧力がかかったこともあったという。


 それまで農業に必要な資材をすべてそろえた店はなく、多くの農家が不便を感じていた。もともと卸売業だった同社が小売業に移行、ワンストップショッピングを可能にしたため「農業屋」は日本初の農業用品の専門店になった。


 歴史と伝統に裏打ちされたノウハウで、野菜や花の苗も自社生産し、現在の品ぞろえは約三万品目。まさに農業のデパート=B


 先代の後を継ぎ、社長に就任して十年。「(継いだのは)義務の部分もあったが、とても幸運なことでもあった。農家にとっても、当社にとってもまだまだビジネスチャンスはあるかなと」。


 また、会社の継承についても「従業員はパート勤務を含めて二百人以上。家業を企業として担う次の世代≠育てていかねば」と力を込める。


 昨年から野菜などの直販所「農家の産直市場みのり」を三店舗に併設した。地元農家の農作物を販売しながら、生産者と消費者の交流の場としても好評という。


 環境や自然、健康に配慮したライフスタイル(ロハス)が注目され、農業に関心がある人も増えている。


 「先日はロハスをテーマにした講演会を開きました。中古農機の扱いなど、商品を売る以外のこともやっていきたい」と話す。


 江戸時代の松阪で始まり、今日まで農業を支えてきた。最後に社長が言った「農業とともに…」という言葉が印象的だった。


 市内の自宅で妻、子ども四人、母の七人暮らし。松阪商工会議所議員。(福家 明子)


H19.11.28 第302号


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