ネズミ研究者
玉城わかば学園教諭
清水善吉さん(49)
松阪市日丘町
希少ネズミの保護に奔走
今年は子(ね)年。松阪市日丘町の清水善吉さん(四九)は、ネズミの研究に取り組んで約三十年。「種類によっては絶滅≠フ恐れもあるため保護が大切…」と、度会郡玉城町、県立玉城わかば学園で、教諭をしながら研究を続けている。
熊野市出身。小型ほ乳類全般を研究しており、県内では数少ないネズミ研究者の一人。東京農大農学部在学中にゼミの教授から「昆虫と同じく、移動能力が少ないから、特色がつかめる」などとの教えで始めたという。。
研究で訪れた日本アルプス。ここに生息するヤチネズミが、和歌山県はじめ奈良県、三重県の一部にも生息していることを突きとめた。
やがて出身地・紀伊半島のネズミの分布、生態を詳しく調べるため卒業後からライフワークとして研究を続けてきた。
これまでに理科教員、県立博物館学芸員、県庁職員として多くの小動物と関わったが、県庁職員のころは、三重県のレッドデータブック(絶滅の恐れある野生生物の目録)の作成を手がけた。
野外での調査も大好き。若いころは地図を頼りに、登山道や作業道などで、野ネズミを捕獲。身近で観察するため飼育したことも。捕獲したヤチネズミの珍しい「キャラバン行動」を見た時は特に感動したという。
清水さんによると、紀伊半島にはヒメネズミなど六種の野ネズミが生息。県内にもっとも多いのはアカネズミで、草地や明るい林に。
北部の鈴鹿山脈や布引山地にはスミスネズミ、南部の熊野、南牟婁の山地にはヤチネズミ。中間の大台ケ原などには両方が生息。、南北で水平方向に棲み分け=A他県とは異なった分布であることが分かっている。
中でもヤチネズミは、県の「レッドデータブック」にも希少種としてリストアップされており、生物相の成り立ちを考えるうえでは、重要な動物。
「これからは豊かな自然を守る≠ニいう掛け声かけだけでなく、それぞれの種におかれた状況を把握。実態に応じた保護対策をする必要がある」話す。
六年前からは、三重、奈良、和歌山の三県で紀伊半島の生き物についてシンポジウムが開かれており、他の生物の分布や生態と比べるなど、情報交換をしながら研究。
今後は、スミスネズミ、ヤチネズミなど地域分布、食べ物について野外実験。若い世代の人にも関心持ってほしいーと訴えていた。
同市で妻と二人暮らし。
(木下 英里)
H20.1.9 第304号
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