更生保護法人三重県保護会
 理事・保護司
 中尾秀晴氏(66)
 津市上弁財町

出所者の社会復帰を支援


 罪を償い、刑務所や少年院から出てきた人に、社会復帰のための支援をしている。施設長を務める「上弁財荘」は、全国に百一カ所ある更生保護施設の一つで、県内唯一。社会との懸け橋≠ニして運営に力を入れている。


 鈴鹿市出身。昭和四十二年から名古屋、三重、岐阜など各地の刑務所に勤務。多くの受刑者と対面した経験から定年退職後、同保護会へ赴いた。


 罪を犯した人の中には、頼るべき家族や帰る場所がなく、更生の意欲はあっても、厳しい環境に置かれている人が多い。一時的な住まいと食事を提供、就労支援や生活に必要な指導をして、自立を助ける。


 「無職の犯罪率は、有職の五倍。早く定職に就き、迷惑を掛けずに続けていれば必ず更生できる。積極的に雇用してくれる事業者、また更生保護女性の会など、ボランティアの温かい協力に支えられています」と話す。


 施設は民家が軒並ぶ住宅地。通りは通学路で、小学生や散歩するお年寄りの姿も。「入所者が健全な社会復帰をするには、地域の理解が必要」と、さまざまな取り組みを続ける。


 入所者を地域の清掃活動に参加させ、施設の会議室を一般開放。お年寄りが集まってレクリエーションを楽しむ「上弁財サロン」の拠点としても機能し、職員二人が歌の講師として参加。地域の憩いの場になっている。


 先月二十日、住民と入所者が交流するもちつき大会があり、約百人が集まった。


 「更生を誓っても失敗する人は、能力は高いが意志が弱い。心の栄養補給が必要なんです。それからどんな人にも良いところがある。それを引き出してやれば」と強調。


 さらに近年、凶悪化する少年犯罪の再発を防ぐため、少年院の教化教育の徹底や保護観察中の指導の強化などを訴えていた。


 一方で、かつての入所者から良い知らせが届くと苦労も喜びに。


 「生活態度が悪く、手のかかる少年がいましたが、退所後に訪ねてくれました。結婚して子どもも生まれて頑張っていると。仕事を休むとかあちゃんに怒られる≠ネんて言ってね」。


 趣味は卓球。市内の卓球チーム「すばる」に所属し、休日は練習に励んでいる。目標は六十代の県代表として大きな大会に出場すること。


 同市高茶屋小森町の自宅で妻淳子さん(62)と暮らす。二人の息子はそれぞれ独立、遊びに来る孫の顔を見るのが楽しみという。


(福家 明子)


H20.2.27 第305号


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