「カロリーナ! 大丈夫か!!」

ランサーの直撃を受けた彼女は、ぐったりと横たわっていた。
助けにいきたい。
しかし彼もまた、敵の猛攻を抑えるだけで精一杯だった。

「クソッ!」

何とかケイボルトの槍を払うと、彼はすかさずカロリーナの下へと駆けつけた。
そして横たわる彼女を抱き上げる。

「カロリー…」

彼女の胸からは滝のように血が流れ、澄んだ緑の瞳は面影もなく霞み、そして……



彼女の腕が力なく落ちる。



「うそだろ、カロリーナ! しっかりしろよ!」

涙を拭う事もせず、彼女を見つめる。

「ゴメンね……私は……もうダメみたい」

「弱音を吐くな! お前が死ぬわけないだろッ!!」


一瞬だけ笑顔を見せた後、彼女が目を覚ます事はなかった……


「女にしては出来る方だったが、後一歩と言ったところだな」

「……せ、戦場で人が死ぬのは普通だ。 逐一復讐などしていたら切りもないしな」


彼は振り絞るように、そして吐き出すように語りだす。
素人目に見てもわかる、それは純粋な憎しみ。


「だが! お前だけは絶対に倒すッ!!」

「面白い、新兵がどこまで出来るのか楽しみだな。 来いッ!」


桜も散り始めの四月下旬。
彼は光の届かない、漆黒の闇を走る事を決意した。
復讐を果たすために…


英雄の晩餐               完










「突然クライマックス、日本語で言うならば最高潮から始まって、打ち切りの如く終わる短編小説を書いたのだけど、どう思う!?」

「戦場において感情を表に出して戦う事は危険ですね。 気持ちはわからないでもありませんが、感情が高ぶると広域的に判断ができなくなります。 この様な状態で戦闘を続ける事は、戦術的に見ても劣勢を……」

「わかったわ、響の言いたい事は非常によくわかりました。 セレナは?」

「……この企画はダメだろ」

「あ、やっぱり?」


となぐら 読切 「姉が姉なら、妹も同じ」