「だ、ダメですよ!ご主人様……」

俺が志乃美のそれに手をかけると、彼女は困ったような顔をする。
その消え入りそうな声が、また俺の欲望を掻き立てる。

「そ、それ以上したら……もう戻れなくなります」

「戻れるさ、俺に任せておけ」

そう言って俺は紐に手をかける。
この紐を解いてしまえば、彼女のモノは産まれたままの姿になるだろう。
その姿を想像しただけで、俺の手は振るえていた。

「ご主人様はてっきりなのはと……」

「アイツはダメだ、短すぎるんだよ。 お前のようにゆとりがないとな。これも、性格もな」

もう我慢が出来ない、俺はの手は狂った狼のように、志乃美に覆いかぶさった。
俺は冷たい目で言い放つ。

「もう諦めろ」

「こ、こんなの嫌です!」

そうして志乃美はついに……





「なのは、何やってんだ!?」

「うおぁっ!ご主人様!? し、志乃美の相手はどうしたのですか!?」

びっくりしたー
人がせっかく楽しんでるのに、突然声をかけないでよね。

「ん? ああ、どうよ、ばっちり外してきたぜ!」

すると彼の手にはいつも志乃美がしているリボンがあった。

「ご主人様ー! リボン返してくださいー!」

「やなこった。 髪を下ろしていても可愛いんだから、今日はそのままでいろ」

「髪が鬱陶しいんですよぉ。 結ばせてくださいー!」





志乃美とお風呂に入った時に見た志乃美の髪を下ろした姿が、結構可愛いと教えたら「ちょ、俺も見たいんだけど!」
何て言いだしたので、リボンを取れば良いじゃないと進言。
さっそくこの人は、志乃美にリボンを取る様に命令するも“髪が邪魔になるので嫌です”と一蹴。
どうしても見たいのか、力ずくでの奪取作戦を見ているうちに、次回作のネタを思いついて書き留めてる。

要するに何が言いたいかと言うと、このノートの存在がバレたら私の地位が墜落する。
それはもうかなりの勢いで。
それでなくても彼にはフォーオタなのがバレている、この状況は非常にマズイ。

何としてもノートを死守せねば!!




僕とメイド 特別編 【アカシックレコード防衛作戦】




私がやるべき事は簡単だ。
目の前で騒いでいる彼らを回避し、脱兎の如く部屋に戻る事。
幸い、彼らはリボンの取りあいで必死になっている。
何とかしてこの場を脱出するには……

A 騒ぎを他所に、仕事の振りをして逃げる
B あえて後ろに隠してそのまま居座り、台風が去るのを待つ


「あれ、なのは〜これなぁに?」

C 志乃美に感づかれる←

マジで?この子はこんな時に微妙なスキルを発揮するのよッ!!
……落ち着いてなのは。 こんなピンチは過去に何度も切り抜けてきたでしょ。
この本はダミーとして最初のページは普通のメモ帳になっているわ。

「ええ、私の作業記録と言うか、気づいた事を書き留めてるメモ帳よ。 気になった事とかね」

我ながら優等生を維持しつつも、さりげないカウンターまで含めた切り返し!!

「凄いじゃない、ちょっと見せてよ!」


( Д)    ゜゜


「だ、ダメよ! これは私が一生懸命やってきた、メイドとしての人生そのものよ! 簡単に見せれるわけないじゃないッ!」

そうだ、それくらい重要な本に位置づける事によって、中身を読ませずにかつ、私の評価を高める事ができる。私最高!

「お前、メイドにはならないって言ってたじゃないか」

この野郎〜!!
もっと乙女心を理解しなさいよ、この鈍感!

「そ、それは……そうよ、私もメイドとしての重要性に気づいたのよ!」

「ふーん」「へぇー」

絶対に信じてない! こいつらは絶対に私の話を聞いていない!
話をはぐらかさないと。

「やっぱり志乃美って髪を下ろした方が可愛いじゃない。 どうせ今日はもう仕事もあんまりないし、そのままにしたら?」

「でもぉ〜」

「いいぞ!その髪を人差し指でくるくるしている仕草は良いッ!」

「そ、そうですか?えへへ〜」

よっしゃ、この特殊フェチズム君が微妙なラインで役にたった!
明らかにこの雰囲気はバカップルいちゃいちゃモードに移行している!!
志乃美、ちょっとムカつくけど今日の所は見逃してあげるわッ!
そして私はイチャついている二人をおいて、部屋を脱出した。

「勝った!」

私は小さな握り拳と声を上げ、ドアを閉めた。
もう私を邪魔する者はいないわ。

「あらなのは、丁度良かった。 悪いけどご主人様のベッドメイキングを手伝ってくれない? すぐ終わるから」

ちょwwwおまwww
何を言い出すかこの年増は! 本当に悪いわよ! 相変わらず空気を読まないんだからッ!
そもそも仕事終わってるのYO!

「あー 一度部屋に戻って……」

「大丈夫よ、すぐに済むから♪」

大丈夫じゃないわよー!!




うん、彼女の言う通り大丈夫。
ノートは腰のリボンに隠したし、メイキングもほぼ終了。
つか今日のこの仕事、志乃美と芹菜じゃない!

「もう志乃美ったら、仕事もしないでご主人様と遊んでるだなんて! ご主人様も志乃美に構い過ぎよ、ちょっとは私の事だって……ぶつぶつ」

どこもかしこも色気づいちゃって。
こちとら愛より哀よ。 何で私がこんな目に……

「なのは、リボン解けて……あら、落とし物よ?」

大体何で私がこんな目に合うの!?
叔父さん怨むわよ、 メイド喫茶のバイトって聞いていたのに〜

「なのー 落とし物だってばー」

彼にフォーオタがバレたってだけでもう顔から火が出るわよ。
そりゃあ一緒にマスターグレード作ってくれるのは嬉しいけどさ。
やっぱり女の子がフォーオタって普通引くじゃない。
……やっぱりフォースの話ができる友達程度止まりだろうなぁ。

「メイドの心得、へぇー結構しっかりしてるじゃ……あれ?」

学校だって一緒なのに、いつもいつもシオンとばっかり一緒に居てぇぇぇぇええええ、もうむかつくなあ。
あんな偽外国人のどこがいいのよッ!
ちょっと胸が大きいだけじゃない!

「…………………………………………………………………わぁ」

あーもうイライラする。
帰って漫画でも読もっと。

「芹菜さーん! 掛け布団終わったから、私はもう帰りますよー…………芹菜さん?」

「なのは、ちょっとエッチだけど面白い主人公ね。 完成したら見せて欲しいな」



……………………………………………………………………………………………………………………………………。



「なのー?」

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

な、何、何を見てるのこの人!?
ちょっと、何で読んでるのよ!!
どどどど、どうして!? え、もしかしてリボンほどけてる!?

「ど、どうした! 何かあったのか!?」

「なのは、何かあったの!?」

「どしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!来るなぁぁぁぁー」

「な、なのは! ご主人様の前よ。 落ち着きなさい!」

落ち着けるわけないでしょぉぉぉぉ!!





その後、私は神速で部屋へかけ出した。 いや、逃げ出した。
どうしよう、今頃芹菜さんはみんなに言いふらしてるかなぁ?

「はぁー フォーオタで創作同人作家って、もう終わりだよねぇー」

ふいにトントン、とドアをノックする音が聞こえる。

「どちらさまですかぁー」

「なのは、私よ」

芹菜さんだ。
ちくしょー 私を笑いに来たのね!
私はドアを覗くように、少しだけ開けた。

「なのは安心しなさい、ノートの件は二人には喋っていないわよ。 あと忘れ物」

彼女が持ってきたのは、部屋に置いてきた私のノートだった。

「芹菜さん……ありがとうございます〜 うわぁぁぁぁん」

「こらこら、泣かないの」

私は芹菜さんの事をこうるさいオバサンだと思っていたけど、それは違った。
何て素晴らしい人なんだろう。
まるで聖母だ。
心の涙が止まらない。
基本的に人前では泣きません。

「それでね、一つ相談なんだけど」

「はい?」

「次回作では最後の方に出ていた、お姉さん系のキャラと主人公をくっつけて欲しいなあ〜♪」

「はぁ?」

「少しって言うか、全部読んだけど、セリアに感情移入しちゃってね。 でも扱い酷いじゃない? もうちょっと良い待遇でも良いと思うのよ」

ああ、あれの原案は貴女ですから……

「次の作品では幸せになって欲しいなあと」

次でさよならの予定だとは口が裂けても言えない。 ゴメンナサイ。

「あー、うん、考えとくね」


てか見たの!? 全部!?(つД`)









「志乃美ぃー ツインテールにしよーぜー」

「その前にリボン返してくださいよぅ〜」