「だからー! 絶対にこっちの方がいいよ!」 「そんなことないわよ! こっちの方が似合ってるって! ねぇ、芹菜さん?」 「わ、わたしはーどちらでもいいかなーっていうか…」 休憩時間になると、彼女たちは普通の女の子に戻る。 日常の仕事ぶりだけを見ていると意外にも見えるが、彼女たちも普通の女の子なのだ。 と言ってもあまりにうるさい。 論争が始まると白熱しすぎるのは彼女たちの悪い癖だ。 特に締めの芹菜が加わってしまうと歯止めが利かない。 俺は見かねて間に入る。 「一体何を言い争っているんだ?」 「あ、ご主人様!」 「ねぇねぇ、ご主人様も絶対にこっちの方がいいよね!?」 「あ、貴方たち! 申し訳ありません、ご主人様。 騒がしくて」 俺の顔を見ると芹菜はメイドの顔に戻る。 「いや、構わないよ。 ただ何の話かなぁと」 「ねぇ、これが一番しっくりくるよね!」 なのははメモを突きつけてきた。 総合 王立 守備隊 「そうごう…?」 「いえ、こっちの方がいいですよね!」 と言って志乃美もメモを差し出した。 SAITO Official Shield 「さいと…おふぃしゃる?」 「ほら、何の事かわかってないじゃない!」 「何よ! 王立って関係ないじゃない!」 何だコリャ? 俺を尻目に二人は言い争いを続ける。 そしてこのメモの意味が全くわからない… 「で、ではこんなのはどうでしょうか?」 芹菜も負けずにメモを出してきた。 Solid Snake optical suit 「すねーくぅ!?」 「芹菜さんのは根本的に違います! スーツって何よ、スーツって!」 「芹菜さん、メタルギアやりすぎですよー」 「でも語呂的にはいいかなーって……ね?」 話が見えない。 むしろ意味がわからない。 「なんだんだ?」 「これです!」 そう言ってなのはが突き出したのは、一冊のパンフレット。 その中にはこう書かれていた。 “SOS団” 「SOS団?」 「そうです、今巷で話題沸騰の!あの!SOS団です!」 ああ、何かで見たな。 最近ライトノベルで物凄い売上数を誇る、異常な作品があるって。 「で、私たちも負けないように考えようって事になったのです!」 「でもー わざわざSOSで合わせる必要はないんじゃないの?」 「そうね、折角なんだから火乃守家らしい略語の方がいいかも」 あ……あほくさ……(´Д`lll) 俺はその用紙を手に取ると、さっと書いた。 「おお、ご主人様が考えてくれるの!? やっぱり王立だよね、王立!」 「なのは! ここは国王制じゃないのよ? SOSなんだし横文字に決まっているでしょ」 「そんなわけないでしょ、このアメリカかぶれ!」 「だからスネーク……」 「芹菜さんは静かにしてください!」「部屋に戻ってゲームしてなさい!」 「あ、う…」 「ほらよ」 俺は用紙を志乃美に渡すと、振り返りもせずに部屋を後にした。 あー眠い。 「ちょ、何書いたの!?見せてよ!」 「なのー邪魔しないでよ!」 「はいはい、喧嘩しないの」 そう言って芹菜が用紙を取り上げると、ゆっくりと読み上げた。 S それより O おまえら S 仕事しろ 「………」 「………………」 「まぁ、ご主人様ったらハイセンスですね♪」 |
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