このコーナーは、サントラに関するちょっと突っ込んだ内容の話をしていこうと思います。
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カヴァー盤の意外な一面

キャスティングがサントラに影響?

えっ!日本盤だけ特殊なの?

サントラでないサントラって?そもそもサントラとは


カヴァー盤の意外な一面

 先日、大阪のショップ「レア」で店長の杉山さんといろいろカヴァー盤について話をする機会がありました。そこで意外な事実あるいは噂を教えていただきました。みなさんはミッシェル・クレマン楽団という名前を御存じでしょうか。2004年現在で40才前後以上の方で映画音楽マニアなら誰しも耳にしたことがあるでしょう。数々の映画音楽のカヴァー盤を月に何枚もリリースしており、一枚にいつも3曲収録されておりました。中にはサントラ盤自体世界のどこを探しても出ていないものまで演奏して録音していました。ある時ミッシェル・クレマン楽団のレコードのファンが集まって、日本に呼んでライブをしてもらおうという話になり、レコード会社に彼の連絡先などを訊ねたことがあったそうです。さて、その時のレコード会社の対応はあれやこれやとうまくかわして有耶無耶にしてしまったそうです。それからというもの知っている方もいると思いますが、「ミッシエル・クレマン = 都倉俊一」説が巷に広がりました。そう、その真実はどうかにしても、ミッシエル・クレマンは日本人に間違いないという結論に治まるでしょう。左右の画像にあるレコードはいずれもクロード・デュラン作曲によるサントラ盤です。これは日本公開版でしか流れない曲で、「クロード・デュラン = 村井邦彦」ということは出版物に活字になっている事実であります。いかにも「ミッシェル・クレマン」は「ミッシェル・ルグラン」と「ルネ・クレマン」を合わせたような名前ですし、「クロード・デュラン」も「クロード・ボラン」のようですが、当時有名だった「クロード・チアリ」と「ボブ・デュラン」を合わせたとしか思えません。
 この二人以外にも意外な噂(事実?)を教えていただきました。現在活躍中の作曲家がこの当時カヴァー演奏盤を出していたそうです。本人は認めてないそうですが、「ラリー・ネルソン楽団」が「久石 譲」、「スタンリー・マックス・フィールド楽団」が「大野雄二」と噂されているそうです。下積みの時代があったからこそ、才能を認められ今があるのかもしれません。このようなことを思いながらサントラでないカヴァー盤を聴くと、また違った鑑賞ができるかも。

キャスティングがサントラに影響?

 ユナイトからリリースされた「大西部無頼列伝」のDVDは御覧になりました? 気ずかれた方もお有りかと思いますが、日本語吹き替えも音声で選択できますね。日本語音声でのタイトル・バックの曲には「Indio Black」のかけ声が入っているのに、英語音声ではそのかけ声が聴けません。「Indio Black」という言葉は、英語圏ではどうも放送禁止語や差別用語にあたるそうです。で、カットされたわけです。英語題は「Adios, Sabata」(米)「THE BOUNTY HUNTER」(英)てなわけです。なんでこんなややこしいことになったかと言うと、DVDの解説ともだぶりますが、プロデュースもこなすユル・ブリンナーが強引にリー・ヴァン・クリーフを押し退けてサバタの役に割り込みました。イタリア・プロデューサーやスタッフにとっては、マカロニとともに歩んで名をあげたリー・ヴァン・クリーフの方に気があったらしく、役名はサバタだが、服装もスーツから黒づくめに変更して、原題をわざわざ「Indio Black」(ブリンナーはモンゴル系)にして皮肉ったと言われています。ですから当時のサントラ・レコードもLPは日本とポルトガルのみであったということです。

えっ!日本盤だけ特殊なの?

 

 

 

 日本盤だけ編集内容が違っているサントラがいくつかあります。このようなケースでは曲の編集がというのもありますが、日本盤だけセリフ入りという場合が多いものです。「続・シンジケート」や「ベニスの愛」、「ラストコンサート」など70年代の多くのサントラがまるでブームのようにそうでありました。また、この70年代こそサントラの黄金期と呼べる時代でもありました。音楽だけ純粋に聴こうと思っていればセリフは邪魔になりますが、映画を思い浮かべながら聴けばこれほど効果的なものはありません。
 左右の「リトル・ロマンス」は70年代最後を飾る例でありましょう。御存じの方も多数いらっしゃると思いますが、左が日本盤で右がアメリカ盤です。この盤は珍しく、曲の編集も曲のタイトルも違う上、日本盤はセリフが収録されています。まさに70年代の黄金期を終える最後の編集と言えるでしょう。私は、実は日本盤を当時買い損ねておりました。日本盤の内容はすべて、当時のFM(番組名は忘れました)からカセットに録音してあったので、若かりし私は小遣いも少なかったせいで買わずじまいであったのです。歳も重ねてやっと米盤を買いました。聴いてびっくり、全然違うじゃああーりませんか。しかし、友達のA君が買っていたこともあって、「まっいいか」と済ませておりました。そして2000年9月、A君にとってまさに運命の「東海大洪水」が襲ったのでございました。私はそのお見舞いに行って、厚かましくもこの盤を見つけて、おねだりして貰ってしまったのです。(でも、彼ってもうサントラにはぜんぜん興味なかったんだもんっ!当時はあったんだけどねっ)それでこのコーナーを思い付いたわけでして。
 こんな盤もあります。「哀愁のパリ」です。左です。公開当時はシングル盤だけでした。右を御覧ください。かなり経ってからLPとして復刻しました。シングルのA面とまったく同じ曲はありません。実はこのシングルA面はセリフと映画のシーンの音にLPの短い二つの曲を巧みに結合させ一曲をくり返し聴かせるというものです。音はフィルムからダイレクトに録音したもののようにみせかけたのか、良くはありません。しかし、すごく感じがいいのです。私の好きな一枚です。LPにはない味わいです。中古盤屋でみつけたら是非ゲットしよう!

 

サントラでないサントラって?そもそもサントラとは

 もうかなりのサントラ通の方には当たり前のことですが、そもそもサントラとは、映画のフィルムの中にある音が記録されているトラックのことを言います。そしてその中の音楽が別に鑑賞用として独立したものがオリジナルサウンドトラック盤となったわけであります。
 本題に入りますが、もともとのオリジナルサウンドトラック、略してサントラは本来フィルムから録音したものがそうなのですが、それでは音楽だけ聴きたい人からすればセリフや効果音も入っていて邪魔に思うかも知れません。また、フィルムへの記録では音質が落ちてしまうことも考えられます。これまでのサントラには、このフィルムの音そのままがレコードになったものもありますが、ほとんどの場合、作曲者が映画のフィルムを見て、BGMのスコアを書き、そのスコアにそってスタジオで演奏録音したものがレコードとなったものをいいます。前者の代表では「俺たちに明日はない」があります。最近になって「ペイネ愛の世界旅行」のCDのように幾つものメイン・テーマが収録されていたり、別ヴァージョンの曲を収録して、完全盤と称して発売されているCDをよく見かけますが、これらは作曲者が映画のためにいくつかの別テイクを演奏、録音していたものでしょう。「カサンドラクロス」では日本盤とイタリア盤で「愛のテーマ」が違っているのもこのためです。
 作曲者によっては、効果音楽は聞きにくいので聴きやすいように、レコード用に別に演奏の形をかえてリリースしているものがあります。ヘンリー・マンシーニのサントラはこの類いであり、最も顕著なのはFSMからリリースされた「続・猿の惑星」でしょう。これには本来の映画用とレコード用に演奏しなおしてリリースされたLPヴァージョンの両方が収録されています。
 また一方、キングもののように、作曲者以外が演奏したものをサントラ盤として売られていたものもあります。「女と男のいる鋪道」や「レマゲン鉄橋」など多くのものがリリースされています。このようなニセ・サントラを集めてみるのもおもしろいでしょう。


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